宮崎駿監督によるファンタジー『ハウルの動く城』(2004年)が4月2日に「金曜ロードショー」で放送される。同作で“火の悪魔”カルシファー役を演じたのは、我修院達也さん(70)。『千と千尋の神隠し』(2001年)から3年、「ごめんなさいね、また人間の役じゃなくて」と監督本人からオファーされたという。青蛙とはひと味違う“悪カワイイ”声と、“ベーコンエッグ”などの数々の名シーンが生まれるまでを、我修院さんが身振り手振りを交えながら語ってくれた。(全3回の2回目/#3に続く)
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「青蛙と一緒じゃ駄目。しかも、あなたってわからないと駄目」
――『千と千尋の神隠し』(01)で〈青蛙〉を演じてから3年後に、『ハウルの動く城』で火の悪魔〈カルシファー〉を演じられます。2度目の宮崎監督作品、2度目のジブリ作品でしたね。
我修院 そうですね。出演させていただくまでの経緯は『千と千尋』と似た感じ。〈カルシファー〉役でオファーをいただいて、オーディションもしませんでした。最初から決まっていましたね。ジブリに伺って宮崎監督に「また、よろしくお願いします」とご挨拶をしたら、「ごめんなさいね、また人間の役じゃなくて」と仰って(笑)。
〈青蛙〉の時は名前に蛙が入っているから、カエルなんだなってわかるけど、さすがに〈カルシファー〉は名前だけじゃどんなキャラかまったくわからない。「〈カルシファー〉ってなんですか?」「火の悪魔なんです」「火の悪魔? 悪魔ですか」「悪魔でも、かわいくやってね。いいですか、これは難しいですよ。〈青蛙〉と一緒じゃ駄目なんですよ。しかも、あなたってわからないと駄目だから」って宮崎監督からお話がありました。
――なんだか難しそうですね。
我修院 「子どもが喜ぶようにやってください」「悪魔だけど、子どもが怖がったり、逃げ出したくなったり、泣き出すようなのは駄目ですよ」「だけど、怒ったら怖いところがあるということをちょっと見せてほしい」とも言われましてね。さらに「あなたはいろんな声が出せるけれども、ぜんぜん違う声を出しちゃうとあなただってわからなくなっちゃうから駄目」と続いて、「〈カルシファー〉って、本当は主役なんですよ」「原作の小説は『魔法使いハウルと火の悪魔』というタイトルで、〈カルシファー〉も主役なんですよ」って教えられたんです。火がなければ城が動かないんだから、たしかにそうですよね。で、そのうえで「あなたに任せます」と(笑)。
――やっぱり難しいですね。
我修院 お話を伺って、「ちょっとキーを低くしよう」と考えたんです。〈カルシファー〉の「おいら」って、低く出してるんですよ。「おいらは火の悪魔」まで低く話して、「カルシファーっていうんだ」でちょっと高くなる。〈カルシファー〉のモノマネをする時に〈青蛙〉と同じ声で「おいら」とやっている人がいますけど、本当はまったく違うんだよね。