かつての暴力団にとって、最大のシノギ(資金獲得活動)は「博打」だった。今でも多くの暴力団組員たちは自らを“博徒”と称している。

 初詣や花見、夏祭りなどで露店を出して定番の綿菓子やお好み焼きなどを販売する“テキヤ”と称する暴力団もいるが、ヤクザ映画ではサイコロを使った丁半賭博のシーンは定番。多くの暴力団幹部たちは、そもそも博打好きなのが実態だ。

自らを「博徒」と称する指定暴力団幹部が語ったギャンブルの現場とは?(※写真はイメージ) ©️iStock.com

なぜヤクザは博打が好きなのか?

 自らを「博徒」と称する指定暴力団のベテラン幹部が語る。

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「かつて自分で丁半賭博を主催していた。当時は週に1回、賭場を開いていて近所の中小企業の社長さんやスナックのママさん、博打好きなサラリーマン、主婦なども来ていた。一晩で数千万円が動くこともあった。『寺銭』は動いたカネの5%を徴収する。

 自分の場合は毎回1000万円を用意して、負けた客に貸し付けたこともあった。もちろん信用の置ける客だけだが。自分のところ以外にも周りには複数の賭場があり、当時はほぼ毎日どこかで丁半賭博が行われていた。しかし、負けた客が警察にタレこんで、次々とガサをやられて全部つぶされた」

 この幹部が言う「寺銭」とは、賭場を開いている博徒に支払われる手数料や場所代のこと。諸説あるが、語源は江戸時代に寺の境内で賭場を開いていたことが多かったことや、手数料の一部を寺に寄進していたため、などとされている。

 暴力団犯罪の捜査を指揮してきた警察当局の幹部は、「ヤクザはとにかく博打好きが多い。丁半賭博だけでなく、競馬や競輪など公営ギャンブルにも大金をつぎ込む者も多かった。趣味が高じて、競走馬のオーナーになったヤクザの大幹部も知っている」と話す。

オッズを見ると「親分が来ているな」と分かる

 競輪、競馬、オートレースなどの公営ギャンブルの収益は地方自治体に入ることになっている。しかし、公営ギャンブルにただ乗りする形で客を募るノミ行為というシノギもあり、競馬法違反などで警察が事件化することも、かつては多かった。

 前出の指定暴力団のベテラン幹部が続ける。

「所属していた組の親分は競輪、競馬が好きだった。競馬のG1のような大きなレースではなく、地方競馬にも自ら足を運んでいた。そういう地方のレースだと、スタートが近くなると、さほど人気のない馬のオッズが突然ドーンと下がることがある。そこで、『今日は親分が来ているな』と分かる。大穴を狙って、人気のない馬にかなりな大金をつぎ込んでいた。

 最初はオッズの変動について不思議だなと思ったが、次第に『また親分が来ているのか』と納得するようになった。不人気の馬だから当然負ける。しかし、ごくごくたまに当たって、かなりな大金が手に入ることになる。それがスリル満点だったのだろう」