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「闇カジノを摘発しても、ケツ持ちの暴力団までは…」警察を悩ませるヤクザの巧妙な“博打ビジネス”

ヤクザとしきたり#10

2021/04/04

genre : ニュース, 社会

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警察手帳を偽造して闇カジノを狙う犯罪グループ

 賭博は違法であることを知りつつも多くの人たちを引き付けるだけでなく、多額のカネをも吸い寄せる。巨額の利益が上がるが、違法な手段で得たカネであるため、そもそも公にはできない。

 だからこそ、その「闇のカネ」を狙う犯罪グループのターゲットとなるケースがあった。

 前出の警察当局の幹部が、大々的に強制捜査に乗り出した事件について語る。

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「かつて、犯行グループが『警察の強制捜査だ』と言って、闇カジノの男性経営者の自宅を襲い、数千万円のカネを強奪したことがあった。経営者からすると、違法なカネだったうえ、警察を名乗る相手ではどうしようもなく、言われるがままカネを差し出したようだ」

 犯行グループは「POLICE」などと印刷された偽物の警察官の制服に身を包んで男性経営者宅を訪れて、偽造した警察手帳と捜索差押令状を示して、「賭博開帳図利容疑で家宅捜索する」と男性宅に押し入った。そして、室内を物色して多額の現金を発見すると、「このカネを証拠として押収する」と言い放って持ち去ったという。

(※写真はイメージ) ©️iStock.com

「表に出せないお金」という弱み

 数カ月すると、犯行グループが再び男性経営者宅に押しかけて、偽造した逮捕状を示して、「賭博開帳図利容疑で逮捕する」と男性に手錠をかけて用意した車に押し込んで拉致。数時間にわたり車で連れまわす一方で、こっそりと男性の親族に身代金を要求。親族を通じて支払われた数千万円を奪うと、男性は解放されたという。

 男性も当初は警察による捜査だと思い込んでいたとはいえ、半信半疑だった時もあるという。しかし、奪われたのは違法な闇カジノで稼いだカネ。表には出せないという弱みがあった。

 男性は、この段階で地元の警察署に被害に遭ったことについて相談し、強盗や身代金目的の誘拐事件だったことが発覚。「本物の警察」の捜査が始まったということだった。