球春到来。
プロ野球が開幕した。
ベイスターズにのめりこんで応援していた数年前までは、新しいシーズンへの期待と不安とでいちばんワクワクできる時期だった。が、野球に対して急速に興味がなくなると、不思議なもので「ああ、そうなんだ――」くらいの感覚になってしまっている。
興味を失った理由はいくつかあるが、中でも大きいのは選手のスタイルの変化だ。近年はトレーニングや生活への意識が向上したことで、どの選手もアスリート然となり、端正な雰囲気になった。もちろんスポーツ選手として、それは圧倒的に正しい。何も批判するところはない。
が、個人的にはそれだけでは寂しい感じがするのだ。ゴツゴツして、泥臭く、汗臭く、厳つく――そんな個性の際立った「オジサン」な選手たちが、野球が好きになり始めた一九八〇年代初頭の頃のプロ野球にはたくさんいた。彼らに惹かれ、野球にハマり込んでいった。荒々しさ。それが、野球に求めるものだった。
今回取り上げる映画『ダイナマイトどんどん』は、筆者が求める野球の魅力に満ち溢れた作品である。
舞台は米軍占領下の小倉。そこでは岡源組と橋傳組という二つのヤクザ組織が、激しい抗争を繰り広げていた。見かねた警察署長(藤岡琢也)は、ヤクザ対抗野球大会を開催、平和的解決を図る。
橋傳組は金にあかせて野球経験のある助っ人を集める一方、岡源組は元プロ野球選手の傷痍軍人(フランキー堺)の猛特訓で鍛えられていく。
岡本喜八監督らしいユーモアとリズムで、軽快かつエネルギッシュに進んでいく試合内容がたまらなく楽しい。
隅々まで登場人物の全てが個性的なのだが、なんといっても、選手たちのキャラクターが素晴らしい。
変則的なサイドスローから剛球を投げ込むも、酒を飲むと我を忘れて試合中でもベロベロになってしまう作蔵(田中邦衛)。人差し指を詰めているため、投げるボールが魔球になる銀次(北大路欣也)。銀次の完全試合を阻むためにホームベースをまたぐように打席に立って当たりにいく繁蔵(ケーシー高峰)。そして、ヤクザとしては武闘派だが、野球となると頭脳的――というよりずる賢いプレーを得意とする主人公の加助(菅原文太)。
ヤクザならではの無茶苦茶なキャラクターの荒くれたちが意気揚々と暴れ回る。
それが不思議とデタラメな話には感じられない。こういう選手たちって、実際にいたよなあ――観ていてそんなことを思えるからだ。本作を観ていると、好きだったプロ野球を思い出させてくれる。