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source : オール讀物 2020年12月号

genre : エンタメ, 読書, 歴史

今村 たしかに、なんとなくこれまで昭和は書きづらい雰囲気がありましたね。歴史小説は史実をきちんと踏まえたうえで、フィクションでもあるんだから、禁忌みたいなものをあんまり設けて欲しくないって気持ちがあります。僕が昭和を書くとしたら、第二次世界大戦で活躍した、ドイツ陸軍元帥のロンメルや、同じくドイツ軍人で、電撃作戦の生みの親であるグデーリアンを取り上げたいんだけど、書きようによっては、色んなところから非難されると思うんです。

谷津 よく分かります。歴史小説が作ったイメージによって不幸になったケースも実際ありますし。そこに対して作家が責任を持てるかといえば……。

川越 難しい問題ですよね。僕は熱源』(文藝春秋)でアイヌ民族の英雄的な人物を描きましたが、まだ孫くらいの世代の方はご存命なんですね。彼らから「こんな人じゃない」と言われてしまったら、やっぱり辛いところがあって。今村さんのおっしゃる通り、フィクションを書く以上、読者に対して面白いものを提示するのは当然として、史実を扱う以上、これ以上はフィクションとして踏み込んではいけない領域というのを書く側が意識しておかなければいけないと考えています。

『熱源』(川越宗一)

谷津 それらを踏まえて、歴史小説家という枠組みゆえに書けない物語ってありません? それこそ歴史小説家と呼ばれると、日本の歴史小説であることが暗黙の了解とされますし、なんなら江戸より前のほうがいいよねっていう風になりやすいというか。

今村 世界史にもっと興味を持ってくれたらいいんやけどね。東インド会社とか、めちゃくちゃ面白いと思う。

谷津 それこそ、武川さんは大学で研究されていたわけだから、ヨーロッパを書きたいんじゃないですか?

武川 ドイツ傭兵やスイス傭兵が活躍する話を書きたいです。でも、これを出版社側に話すと、「読者がついてこれますかね……」って言葉を濁される感じがあって(笑)。

澤田 そういう意味でも、偏愛本で挙げた皆川博子さんは憧れです。日本の歴史小説も書けば、幻想小説やドイツの歴史小説も書かれる。いつか皆川さんのような小説家になりたいですね。

※この大座談会に参加した7名の歴史作家が勧める、(1)初心者にお勧めの短篇、(2)ビジネスに役立つ歴史小説、(3)自身が偏愛してきた作品について、文庫を中心に販売する歴史時代小説フェアが、紀伊國屋書店小田急町田店、吉祥寺店、国分寺店などで開催中です(緊急事態宣言中は休業)。

初出:オール讀物2020年12月号

オール讀物2020年12月号

 

文藝春秋

2020年11月21日 発売

オール讀物2021年5月号

 

文藝春秋

2021年4月22日 発売

 

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