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「上司は織田信長。忍者が邪魔するブラックな職場」「渋沢栄一の悩みを…」気鋭の歴史小説家7人が本気で勧める“ビジネスに役立つ”小説とは⁉

天野純希×今村翔吾×川越宗一×木下昌輝×澤田瞳子×武川佑×谷津矢車 #1

source : オール讀物 2020年12月号

genre : エンタメ, 読書, 歴史

 ステイホームのGWこそが、歴史時代小説という知的な「武器」を手に入れる大チャンス! その道標として、いま最も注目を集める気鋭の歴史小説家7人が「初心者にお勧めの短篇」「ビジネスに役立つ歴史小説」「自身が偏愛してきた作品」などを縦横無尽にご案内します。お話いただいたのは、谷津矢車さん、武川佑さん、澤田瞳子さん、木下昌輝さん、(写真下段右から)川越宗一さん、今村翔吾さん、天野純希さんの7名です。(全4回の1回目。2回目を読む)

上段右から谷津矢車さん、武川佑さん、澤田瞳子さん、木下昌輝さん、下段右から川越宗一さん、今村翔吾さん、天野純希さん

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歴史小説家としてのプロデビューまで

――まずは自己紹介を兼ねて、皆さんが歴史小説に親しみ、作家を志したきっかけからお話しいただけますでしょうか。

天野 うちは父親が歴史小説と星新一しか読まない人で、子どもの頃から歴史小説になじみがありました。昔から物語を作ることが好きだったので、小説家を志したんですが、自然に歴史ものを書いてましたね。それもあって、大学は史学科を選びました。

澤田 私も大学、大学院では歴史を勉強しましたが、小説家にだけはなるものかと思ってました(笑)。母親(澤田ふじ子氏)が小説家ということもあり、身近すぎて関心が向かなかったんです。はじめは研究者の道を考えていたのですが、とても食べていけそうにない。それでも、歴史とは関わっていきたかったので、小説だったら歴史とつながる仕事が出来るんじゃないかと考えるようになりました。

武川 澤田さんと同じく、最初はドイツ文学の研究者を目指していたものの途中で断念しました。ただ私の場合、ヨーロッパの歴史、14世紀のイタリア都市国家や、イタリア、スイスの傭兵、ドイツの農民戦争のあたりがすごく好きで、以前は日本の戦国時代ってほとんど興味がなかったんです。社会人になって書店員として働いていたとき、『信長協奏曲』という漫画がドラマ化するタイミングで、それを読んだときにはじめて、「戦国時代って面白い」と思うようになりました。

谷津 自分も歴史への興味は昔からありましたけど、小説への興味とは別ですね。小説家を目指そうと思ったのは、22歳のとき、一度は就職したものの、どうも普通の社会人には向いてないぞと悟ったんです(笑)。好きな小説なら仕事にできるかもとなって、デビュー前はSF、恋愛もの、ミステリーなど、色んなジャンルの小説を書き始めました。その中でたまたま歴史小説が認められてデビューしたという経緯でして。

木下 僕は高校時代から小説家志望だったんですけど、最初は歴史ものじゃない小説を書いていました。というのも、昔から司馬遼太郎先生の小説が大好きで、自分が司馬先生のように書けるとは、とても思えなかったんです。歴史小説を書き始めたきっかけは、京都で竹内流という古武道と出会ったこと。竹内流では、人を信用するな、生き残るためだったらどんな手を使ってもいいという考え方で成り立っていて、戦国時代の下克上に似ている。この竹内流の考えを書いたらオンリーワンになれると思って、試しに竹内流の開祖を破った戦国武将の宇喜多直家の話を書いたら、2012年にオール讀物新人賞をいただけました。以来、与えられた場所で頑張ろうという思いで歴史小説を執筆しています。

司馬遼太郎の執筆風景

今村 小学校5年生のときから、歴史、時代小説ばかり読んでいたので、自分が小説を書こうと思ったときに、ジャンルに関しては迷いはなかったですね。