性風俗の世界で働く女性の無料生活・法律相談窓口「風テラス」には、昨年、2929人もの相談者が殺到したという。様々な業界に甚大な影響を与え続けているコロナ禍は、いわゆる“夜の世界”で生きている女性たちの生活も一変させた。

「風テラス」の発起人・坂爪真吾氏による『性風俗サバイバル ――夜の世界の緊急事態』(ちくま新書)には、その生々しい現場の実態がまとめられている。同書より「第四章 歌舞伎町に立つ」の一部を特別に掲載する。(全2回の2回目/前編から続く

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ネットを見て集まる男性、そして摘発に動きだす警察

 女性と同様、あるいはそれ以上に謎が多いのは、コロナ禍の歌舞伎町にわざわざ女性を買いに来る男性客だ。彼らはどのような理由・経路で、路上までやってくるのだろうか。

坂本「ネット等の公開情報を見てやってくる男性が多いと思います。ナイナイの岡村が言っていた現象が実際に起こっている。つまり、今まで路上にはいなかったようなタイプの女性が立ち始めている。そして値段も下がっている。そうした風評がSNSや動画サイトで広まったことで、男性が来るようになったと思われます。

 女性たちからは、「冷やかしの客が増えて、すごい迷惑」「買う気がないのに話しかけてきたり、じろじろ見るだけで去っていく男が増えた」という声が上がっています。また、たまたまこのエリアを通りかかっただけの女性が、付近に立っている買春目的の男性たちから舐め回すような不躾な視線に追われることも散見され、雰囲気は悪くなる一方です」

©iStock.com

 女性たちの姿がSNSや動画で拡散され、それを見た男性が冷やかし半分、怖いもの見たさ、あるいは性欲を満たすためにやってくる……という構図があるようだ。

 コロナの影響が強まって以降、歌舞伎町の特定エリアに男女が増えているということは、警察でも認識されていた。風紀の乱れを懸念する近隣住民からの要請もあり、取り締まりは強化されている。女性たちが集まりにくいように、このエリアの環境そのものを変えようという動きもあるという。

坂本「先日夜回りをした際も、顔見知りの子たちから「昨日も今日も何人も捕まっているみたい。うちらも捕まるんじゃないかと思うと怖くて仕事ができない」「稼がないと家賃が払えない。でも、ここの道を歩いている男性は、皆私服警察官のように見えてしまう」などと言われました。

 あそこにいる女の子たちを散らしたところで、根本的な解決にはならない。結局行き場がなく戻ってくる可能性が高いし、他の場所で同じことをやり続けるだけです。彼女たちがネット等で買春客を募るようになれば、その存在が可視化されにくくなり、状況によっては、被害も深刻化する危険があります。

 警察としても、売春防止法があるため、地域住民からの通報や相談が増えれば取り締まりを強化せざるを得ない。一方で、女性たちを検挙するだけでは根本的な解決にはならない、ということも理解している。最終的には彼女たちを公的支援につなぎ、売春ではない方法で生計を立てられるようになる方向に持っていきたい、という考えを警察も持っている。