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坂本「初めて警察に検挙された子は、「やっぱりダメなことなんだ」とショックを受ける。そのタイミングが支援につなげる機会にもなります。警察から、本人の同意を得た上で、東京都や基礎自治体(市区町村)の福祉事務所や女性支援部門につないでもらうことができれば理想的だと考えています。草の根レベルで動くのは民間、最終的につながるのは行政、という役割分担が必要です。

 検挙されるのが2回目、3回目という女性も多い。検挙された後も支援につながらず、また路上に戻ってしまう女性もいます。それを何とかして止めたい。ただ、警察も彼女たちをどこにつなげばよいのか、判断しかねている部分もある。

 直接行政につなぐことが難しい場合、民間の支援団体が「翻訳者」として仲介に入る必要がありますが、そのためには、まず彼女たちと本音で話をしてもらえるだけの信頼関係を築くことが大前提になります。ただ、これに関しては、やる気や資格だけではどうにもなりません」

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※写真はイメージ ©iStock.com

「今までに会ったことのない大人に会った」と思ってもらいたい

 路上に立つ女性たちと信頼関係を築くためには、支援者という立場を超えて、一人の人間として関わっていく必要がある、と坂本さんは語る。

 一緒にラーメンを食べながら話を聞いたり、交通費や宿泊費としてお金を貸したり、深夜に送られてくる重たい内容のLINEに返信をしたり……。スカウトマンのような振る舞いや、福祉の一線を越えた対応をせざるを得ないこともあるが、そうした方法でないと信頼関係を作れず、支援につなげることもできない。

坂本「ラーメン屋で話を聞いて、交通費とインタビュー代として2000~3000円を渡して「じゃあ、気をつけて帰ってね」と告げると、「本当に話だけでいいんですか?」と驚かれることもあります。当然のことながら、こちらはしっかりと自制する。どのような状況であれ、誰に見られても恥じることのない関係性を堅持する。

 これまで彼女たちの周りにいた男性は、対価として身体の関係を求めてきたり、お金を無心するような大人が少なくなかった。しかし、実際にはそんな大人ばかりではない。

 食事をおごってもらっても、お金を渡してもらっても、見返りを求めず、指一本触れてこない大人の男性もいる、ということをまず知ってもらいたい。

「今までに会ったことのない大人に会った」と感じてもらえれば、頭の片隅に残る。そうすれば、「これはマズいかも」「さて困った」という状況に陥った際に思い出してもらえる可能性が高くなり、孤立を避けることにもつながるのではないかと思います。

 もちろん、100人の女性を相手にそれができるのか、と言われればできません。福祉として正しい方法かどうかも分かりません。ただ、そうした個人的な信頼関係でしかつながれない女性や、こちらからリーチしないと声を上げられない女性は確実に存在します」