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文春野球コラム ペナントレース2017

2017/10/10

届かなかった夢の先

 拝啓

 阪神タイガースファンの皆様。この度は2位でのペナント通過・CS進出と、さぞや不本意な結果だったと心中お察し致しますが、それでも心と視線の先には日本シリーズを凛と見据え、まだまだ楽しい野球シーズンを過ごしておられる事と思います。

 さて、その後糸井嘉男選手の調子はいかがでしょうか。残暑の厳しい8月の終わり、サヨナラホームランの直後華やかにバットを放り投げる彼の姿を拝見した時、実に糸井選手らしいホームランだと大きく頷いたものの、直後にやはり(タイガースでは)ヒーローインタビューで高らかに語る彼の姿を目撃した我々Bsファンの嫉妬の炎はピークを迎えました。「あぁ楽しそう、嬉しそう」「あんな(外野まで手を振りに来てくれる)糸井選手は見た事がない」我々Bsファンの話題はT-岡田選手の27号では無く、糸井選手のサヨナラホームランだった事も今では良い夏の思い出です。是非日本一目指して勝ち進まれるよう糸井選手の活躍を陰ながら、いや地中深くよりお祈り致しております。

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 敬具

 一方、悲願の21年ぶり優勝とはならなかった我らがBsの2017シーズン。しかし、何はともあれ今シーズンも面白く、可笑しく、時に悶々と野球を楽しませてくれたチームに労いと感謝の拍手を送りたい。そしてこの「文春野球コラムペナントレース」でも読者諸君、関係各位、ペナントを争ってくれたライターの皆さんに心から感謝を伝えたいと思う。9月に入り自分でも驚くようなスランプに陥り、Bsファンの期待を裏切りまくった結果となった事も重ねてお詫び申しあげる。来年があるならば福良監督さながら「一から出直してまた来年頑張りたい」一心である。

新戦力の台頭著しかった2017シーズン

 さてさて。今年のBsの戦いを振り返るうえで、まっ先に思いつくのが「新戦力の台頭」だろう。山岡泰輔、黒木優太、小林慶祐、近藤大亮、大城滉二、杉本祐太郎、そして誰もが知る若き大砲吉田正尚。それほど2015年と2016年のドラフトが大成功であったという事だろうか。澤田圭祐や山本由伸を含め実に多くの新戦力が1軍出場機会を得たのだ。まれに見る、いやマレーロに見る外国人補強も大当たりで、ここに来てBsの編成は神がかったものを見せている。

 しかし、一方で心配な要素があるのもまた事実。2016年までのドラフトを手がけた加藤康幸編成部長が2016年シーズンをもって退団した事だ。Bsをよく知る長村裕之球団本部長が後任の編成部長を兼務するという事でその点は取り越し苦労かとも思うが、やはり前期業務が大成功であった場合ほど、引き継いだ方のプレッシャーも相当なものであるのも事実だろう。ここはひとつ「更なる戦力の充実」を目指して編成の手を緩める事無く、Bsらしい着実な補強を継続して欲しいと思う。

今季、8勝を挙げたドラフト1位ルーキーの山岡泰輔 ©時事通信社

 後半戦の打線の破壊力も実に素晴らしかった。7年ぶりにホームランを30号の大台に乗せたT-岡田、途中合流ながら最後まで3割を維持した吉田正尚、NPB通算100,000号を放ったマレーロに主砲ロメロ、チーム最高打率の中島宏之、勝負所では小谷野栄一の活躍も光っていた。このBs打線は来シーズンも間違いなく他球団の脅威となるだろう。欲を言えば「和製右の大砲」の存在が待ち望まれる為、是非とも杉本選手にはその打棒に更に磨きをかけて欲しいと思う。

 いずれにせよ、実はそう悲観する事もなくシーズンを終える事が出来たと思う。長かったトンネルの出口を示す一筋の光が見えた気がするからだろうか。我々Bsファンは皆、今から来シーズンが楽しみなのである。「来年こそは」と年々怨念めいたものを増す我らがBsファンの悲願も、ぐっと現実味を増したのだ。「叶うべき夢の先へ」ライトスタンドに大阪紅牛會の名曲「賛丑歌」がこだまする。

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