橋本聖子新会長就任は絶好の機会だったが…
2月、五輪組織委の会長だった森喜朗氏の女性蔑視ともとれる失言に端を発するゴタゴタのすえ、橋本聖子氏が新会長に就任しました。世論を巻き込む大混乱の末、女性の新リーダーが誕生したのです。
外形的にみれば、大きな変化です。組織が生まれ変わるチャンス、新しい五輪像を世界に示す、絶好の機会だったように思います。
日本に渦巻く旧態依然としたものごとが壊され「あらたな正義、あらたな価値観」に民意が共感し感動する。そして五輪後は、様々な側面でそんな明るい時代が到来する――。そういった期待感とともに、多くの国民が、コロナ禍にあっても五輪への寛容と希望を抱くことができたのかもしれない。そんな好機だったように思います。
しかしながら、オリパラの組織委員会の女性理事が12人増えて女性が全体の40%となった、という報道はありましたが、そういった前向きなニュースは続きませんでした。これでは「体制が変わりました。以上」であり、新体制が新風を巻き起こした、といった報道は、ほとんど見受けられません。
「体制側の正義」しかみえてこない
それ以上に「週刊文春」が報じている開会式の演出に関する醜聞が世間の注目のマトとなっています。それもあってか、体制側はその後も、「さらに目立たないように」という姿勢を強め、とにかく粛々と開幕への準備を進めています。醜聞について、何もなかったかのように繕い、開会の日を迎えるために。
大変残念なことですが、東京オリンピック・パラリンピックはこうしてやはり、旧来同様の「体制側の正義」しかみえてこないイベントになるでしょう。
「あらたな正義、価値観」によって時代がこれから大きく変わるんだという希望と共感を得るチャンスを逸したかたちで開会を迎え、選手たちの頑張り、メダル数を軸にひとときの夏のブームは謳歌するものの、終わればすぐに静かな秋を迎えるのではないか、と思わざるを得ません。