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インドが対中抑止の陣営に入った歴史的意義

 3月12日、バイデン大統領の主導で、日本の菅義偉首相、オーストラリアのモリソン首相、インドのモディ首相との初めての「日米豪印首脳協議(クアッド)」をオンラインで開きました。ただし、これは軍事同盟ではなく、4国で中国を外交的に抑止するための協力体制なので、今回はワクチン外交で中国に対抗するべく、4カ国主導の枠組みなどを決めるにとどまりました。

 しかし、あまり中国に対してはコミットしたがらなかったインドが対中抑止の陣営に入り、開催の定例化に合意したことには歴史的意義があります。インド太平洋地域に影響力を広げようとする中国の「一帯一路」の動きに対して、タガをはめたことになるからです。安全保障や海洋問題に限らず、ワクチンなどソフトな領域でも「中国の好きにはさせない」という意思を示したわけです。

 さらに16日にはブリンケン国務長官とオースティン国防長官が日本を訪れ、新政権としては初の対面での「日米安全保障協議委員会(いわゆる2+2)」を開きました。その2日後にはソウルに移動して、今度は「米韓2+2」を開きました。

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 つまり、そうやって同盟国との会合を体系的に積み重ねて中国をけん制した上で、19、20日にアラスカで米中の外交トップ同士の直接会談に臨みました。冒頭、ブリンケン国務長官は取材するメディアを前に、台湾問題や、チベット、ウイグル、香港の人権問題などで、対中批判の核心をぶつけました。これは、アメリカ国内にも国際社会にもバイデン政権の強硬な姿勢を見せておきたいという動機に基づく作戦です。

中国が逆ギレした勇み足のように見えた

 中国側はその戦術に乗せられ、過剰反応したのか、外交のプロである楊潔篪政治局員でさえ踏み込みすぎた対米批判の反論に出たのでした。中国国内や習近平指導部の厳しい目を意識してか、きわめて強い口調で20分も反撃したことが、かえって中国側の狼狽ぶりを示し、逆ギレした勇み足のように見えたのです。

 特に、全体主義の政治体制による中国の人権蹂躙問題と、アメリカ社会の人種差別問題を混同したような反論に及んだのは、そうした狼狽ぶりを表していました。中国は痛いところを突かれたんだなと国際社会の目に映ったはずです。

 アメリカ側は入念に準備を行ない、戦術的にうまく対応したといえます。そこに、アラスカ会談初日の見どころがありました。「バイデン政権は対中強硬だ」と、多少過度に演出したのかもしれません。

米中外交トップ会談に出席するサリバン大統領補佐官(右端)、ブリンケン国務長官(右から2人目)、中国の楊潔篪共産党政治局員(左から2人目)、王毅外相(左端) ©時事通信

 というのも、非公開だった2日目の会談は一転して、気候変動問題などで協力する話し合いをしたようです。北朝鮮やイラン、アフガニスタンへの対応も話題に出たようです。

 実際、バイデン大統領自身も、25日に行なった就任後初の記者会見で、対中関係について「民主主義国家と専制主義国家の闘い」と厳しく語る一方、4月にオンラインで主催する気候変動に関する主要国首脳会議には、習近平主席とロシアのプーチン大統領も招待するとしています。