中国はこのような法律を施行し圧力をかけ続けることによって、日本が対話に乗ってこざるを得ない状況を作ろうとしているのでしょう。「尖閣問題は領土紛争です。日中間で話し合いましょう」と強調し、日本側の「領土問題は存在しない」という姿勢を突き崩そうというわけです。中国政府は尖閣が日本にとっていかに大きな問題であり、日本の国内世論は中国の望む方向へ決して向かわないことをどこまでわかっているのか。日本政府は、そのことを伝える努力を怠ってはなりません。
日米同盟の歴史上かつてない、踏み込んだ宣言
また、日米2+2の共同声明は台湾海峡問題についても、日米双方は「台湾海峡の平和と安定の重要性」を強調すると明言し、台湾の現状を守るために日米の連携を申し合わせました。加えて冒頭で「日本は、国防及び同盟の強化に向け、自らの能力を向上させることを決意した」と、防衛力の強化を明確に謳っているのです。これは、全体として日米同盟関係の歴史でもかつてない、踏み込んだ宣言だと思います。それだけに日本の側には責任と覚悟が求められることにもなります。
日本の対中外交の歴史を肌感覚でよく知る旧世代の日本人からすると、「日本政府はそこまで言って大丈夫なのか。中国が激怒して、日中関係に大波が来るんじゃないか」という懸念を抱いても当然の内容です。しかし、日本は「あえて」そこまで踏み込んだわけです。アメリカ側が、日米安保条約による「日本防衛の責務は絶対的である」と言い切ってくれた以上、ギブアンドテイクで日本もここまで踏み込むべきだ、という決断をしたのでしょう。
とりわけ台湾問題は習近平政権が最も敏感に反応するテーマの一つです。「中台統一」は、習近平が最高権力者であり続けるための大義名分ですから、一歩も譲れない。他方、アメリカは台湾の民主主義を守り、武力統一は許さない姿勢です。台湾有事が現実的に浮上してきたというワシントンの危機感が、1年前と比べてもずいぶん強まっていると感じます。
そこで考えなければいけないのは、中国の反応です。特にこの台湾海峡の問題に、日本が関与を深めたことに加え、ウイグルや香港の人権問題について日本がさらに批判を強めれば、黙ってはいないでしょう。何らかの対抗策や反撃的な動きがあると、予測しておかなければいけません。