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中西輝政氏が徹底解説「米中新冷戦の地政学」中国指導部で習近平への懸念が噴出 台湾、ウイグル、香港問題…

菅首相が示すべき“強硬姿勢” 米中新冷戦 #2

2021/04/11
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北朝鮮が弾道ミサイルを発射した理由

 3月22日、習近平主席は北朝鮮の金正恩総書記と親書を交わして、北の経済の「面倒を見る」という提案をした模様です。それを受けたかのように北朝鮮は、25日に弾道ミサイル2発を日本海に発射しました。中国がゴーサインを出したのか、あるいは阿吽の呼吸なのかわかりませんが、中朝で早速、日米をけん制する動きに出たことは間違いありません。

 さらに、22日からロシアのラブロフ外相を華南の景勝地で有名な桂林に招き、王毅外相が2日間にわたる会談を行なったことも、中国国内で大々的に報道されました。バイデン政権に対抗するため中ロの結束を確認し、共同声明でも「各国は人権問題の政治化に反対すべきだ。民主主義の推進を口実とした内政干渉は受け入れられない」とアメリカ批判をしました。北朝鮮を裏で動かし、ロシアを引き込んで、中国包囲網を築こうとするバイデン政権に反撃ののろしを上げたように見えます。

ロシアのプーチン大統領 ©️文藝春秋

 習近平主席は、建国百年の2049年までに、経済でも軍事でもアメリカを追い越すという目標を掲げています。こうして求心力を高めて自身への権力集中を進め、来年の党大会で3期目に入るはずです。そして2030年代まで国家主席を務めるつもりだ、とも報道されています。

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 しかし、共産党の長老の中には、元首相の朱鎔基や胡錦濤指導部時代の温家宝の系列、あるいは江沢民人脈の中にさえ、「このままずっと習近平でいいのか」という声が聞こえ始めています。去年8月の北戴河会議の直前には、そういう声がいくつか、共産党指導部の中から漏れ伝わってきました。