共産党指導部が習近平独裁に懸念を強める
こうした中で、これまでどちらかといえば、日本以上に親中だったヨーロッパがNATOを中心として、本腰を入れて対中抑止に動き出しています。イギリスやフランスばかりか、経済的に中国と蜜月だったドイツまで、南シナ海やインド太平洋地域に海軍の艦艇を派遣するようになりました。3月に行なわれた初の「日米豪印首脳協議(クアッド)」も含め、今や世界のGDPの多くを占める主要国が中国包囲網、あるいは中国をけん制する方向へ舵を切りました。
ひるがえって、中国の同盟国は北朝鮮だけです。そこに、必ずしも同盟関係にあるわけではないロシアと、「一帯一路」で影響力を植え付けた小国しか味方のいない中国は、国際社会での影響力は低く、今後国際政治上はかなり不利な立場に置かれるでしょう。さらに外交的孤立化が深まり、仮にそこに、経済の不調が重なれば、共産党指導部はやはり習近平の独裁に懸念を強めるでしょう。
日米首脳会談は中国をにらんだ対米外交の仕上げ
中国はコロナを早く封じ込めたせいもあって経済は“独り勝ち”の成長率ですが、国内消費が後退しているようです。しかも2020年度のプラス成長は、かなりの割合を公共事業が占めたといわれます。
したがって、習近平指導部は決して盤石ではありません。たしかに短期的には「アメリカに断固対抗せよ」というナショナリズムのスローガンで、国内はまとまりやすくなっています。しかし中長期的に習近平体制がずっと続くかどうか、必ずしも見通せません。米中の対立が深まれば、不安定さは増すだろうと見るべきです。
今後を占う意味で大切なのが、4月16日に予定される日米首脳会談です。アメリカの日本重視は鮮明ですから、日米同盟の緊密化を演出する舞台装置は整っています。菅総理の訪米は、さきの「クアッド」や「日米2+2」の成果の上に立って、バイデン政権発足に当たっての中国をにらんだ対米外交の仕上げになる重要なものです。
アメリカの強硬な政策に合わせた形の「日米2+2」と同じような対中姿勢を、日米首脳会談で示せるかどうか。その場合の中国の反応はどうなるのか。対中問題を首尾よくまとめられれば、今後の日本外交がアメリカと手を携えながら、日中の経済関係を維持しつつ、安保面で中国の動きを一定程度抑止できると思います。しかし、中国で稼がせてもらいながらアメリカの軍事力に一方的に頼るという虫のいい態度は、いつまでも通用しません。中国に対する菅総理の出方を、世界中が見守っています。