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“痛い”を黙殺するのは「今の時代にマッチしない」…医師が“無痛”乳がん検査を開発した理由

2021/04/12

 35歳で大腸がんになってから、実にいろんな検査・検診をしてきました。「中」を診るわけですから、切ったり、刺したり、入れたり、浴びたりと、必ず身体に何らかの侵襲(ダメージ)を受けます。

 当然、メンタルにも負担がかかります。はじめてCT検査をした時は、造影剤を入れる「ドデカ注射マシーン」のようなものがあまりに恐ろしく、子どものように泣きました。

 検査前から「造影剤は身体に良くないけど、いいね?」という同意書にサインをしなくてはならず、検査後も素早く体外に造影剤を排出するために「水分をたくさんとってね」的な注意書きを渡される……そんなものを体内に入れるのです。怖くないはずがありません。

 私の場合、すでに病気が判明していたためやむなくでしたが、これが健康を保つための「検診」なら、あれこれ言い訳をつけて回避したいと思うのも納得です。

「技師さんに、『この検査はそんなに痛くないですから』と言われたりしますよね。そりゃあ我慢できないことはないかもしれないけど、実際痛みを感じているのに、それを『痛くない』と処理されてしまうのって、今の時代にマッチしない気がするんです」

 こう語るのは東海大学教授で、放射線科専門医の高原太郎先生。『世界一受けたい授業』で「医師が今注目する検査」として取り上げられた「ドゥイブス・サーチ」を開発した先生です。

東海大学教授(放射線科専門医)の高原太郎先生。(画像提供:高原太郎先生)

服を着たままで、痛みもない「新しい」乳がん検診法

 変わったネーミングの「ドゥイブス(DWIBS)」とは、画像診断法「Diffusion-weighted Whole body Imaging with Background body signal Suppression」の頭文字を取ったもので、MRIを用いた革新的な乳がん検診法のことなのです。

 40歳以上の女性が無料で受けられる自治体の乳がん検診では、「マンモグラフィ」が使われています。

 冷たい台にペトっと乳房を乗せ、上からぎゅうぎゅうと板で押さえつけておっぱいを薄く、平らにする。人前では決してさらさない部分を蛍光灯の下でぺろんと露出し、さらにそれをプレパラートのように挟んで顕微鏡で観察する理科の実験のような扱いを受けるマンモグラフィ。私はいつも心のどこかを「OFF」にして臨んでいました。

 そんな、健康維持のために「当たり前」のものとしてのみ込まなければいけなかった乳がん検診の「負」の部分を取り去ってくれたのが、ドゥイブス・サーチと言えます。