〈(ア)甲女は、「片野マンション」で起居するようになった当初は和室で寝ていたが、朝まで小便のために起きることがなく、室内にある洗濯物やローチェスト内のタオルを引っ張り出してそれに小便をするという奇妙な癖を有しており、被告人松永が何度注意しても改めることがなかった。そこで、被告人松永らは、和室ではなく、台所や玄関前に板を敷き、そこに甲女を寝かせるようにした。また、甲女は、トイレに間に合わずに途中で小便を漏らしてしまうので、被告人緒方が後始末をするのが大変であったため、被告人松永らは、甲女に対し、ペットボトルを半分に切った容器に小便をさせるようになった。
(イ)被告人松永らは、由紀夫のいびきの音があまりにも大きかった(当初、被告人松永は腕にはめるいびき防止器を1万円くらいで買い与えたが効き目がなかった。)ので、防音対策として、由紀夫に浴室で寝てもらうこととし、甲女についても、上記お漏らしの対策として、一緒に浴室に寝てもらうこととした。
なお、被告人松永らは、浴室内に布団と毛布を運び入れ、暖房代わりに布団乾燥機で温風を送り込んでいた。したがって、由紀夫らの身体の保温に必要十分な寝具と暖房器具が使われていた〉
しかし、同公判での判決文(以下、判決文)は、清美さんの小用の粗相についての言及はなかったが、〈松永は、由紀夫のいびきがうるさいとして、通電用の電気コードの先に取り付けたクリップを、由紀夫の足にガムテープで取り付け、就寝中の由紀夫に対しても通電したことがある〉と通電の事実を認めている。さらに就寝制限のなかで、由紀夫さんに対して新たに以下の虐待があったことにも触れた。
体育座り・両手首を縛ったまま囲いの中で
〈平成7年10月か11月ころからは、台所に設置した、すのこを組み合わせ、紐で縛って作った囲いの中に由紀夫を入れ、体育座りの姿勢で、両手首を紐で縛り、囲いのすのこにくくりつけて顔面くらいの高さに吊った状態で寝かせた。由紀夫を「二段ベッド」やすのこの囲いの中で寝かせたころは、由紀夫に掛け物を与えなかった〉
判決文では、当時の由紀夫さんの着衣について、次のように説明している。
〈松永は、平成7年秋ころから死亡するまでの間、由紀夫が「片野マンション」で着る物として、長袖カッターシャツ、短いズボン(一時期おむつ)、ジャンパーだけを許し、トランクスは穿かせたが、肌着は与えなかった、裾や袖を長くしておくと汚れて不衛生だとして、常に裾と袖をまくり上げさせた〉