夏になると外せないのが「冷し天ぷらそば」(350円)である。「みよし庵」では常連のファンが多いようで、いつしか年中食べることができるメニューになったという。ガラスの容器に冷たくしめたそばを入れ、冷たいつゆをぶっかけて、あのペラっとした天ぷらを載せ、きれいにわさびを飾って登場する。この美しい姿にいつも感心して食べていた。
そして、最後に紹介するのが「コロッケそば」(310円)である。創業当初からあったメニューのようで、コロッケを「カレーライス」や「カレーそば」のトッピングにする常連も多いという。「メンチそば」とともに隠れた人気メニューだとか。
昭和の時代を見つめた老舗そば屋が消えていく
最後に女将さんから、「みよし庵」をご愛顧してくださったお客さんへメッセージをいただいた。
「長い間、当店をご利用いただき、またご贔屓にしていただきありがとうございます。閉店の4月30日までもう少し頑張ります。営業時間は14時までですが、是非、お越しください。そして、閉店後も蒲田の片隅でみよし庵という小さなお店があったことを少しだけ記憶にとどめていただければ幸いです」
またひとつ蒲田の昭和の立ち食いそば屋が消えていく。
立ち食いそば屋は、ワンコインで老舗にないような素材を使い、安くて、うまい味を、早く提供してくれる。老舗や手打ちそば屋とは、異なるベクトルで存在している。街に静かに存在し、良き時も悪しき時も、自分がダメな時も、世の中に潰されそうになった時も、いつもあっけらかんとして、受け入れてくれる。蒲田の「みよし庵」もそんなありがたい存在だった。女将さん、閉店までがんばって。
写真=坂崎 仁紀
INFORMATION
「みよし庵」
住所:東京都大田区西蒲田7-2-6
営業時間:5:30~14:00
定休日: 日曜日
2021年4月30日閉店予定