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溝口 刑法でやろうと思ったら、犯罪を共謀したけど実行しなかった人間に適用される「共謀共同正犯」。六代目山口組組長の司忍も、共謀共同正犯で逮捕されている。

鈴木 共謀共同正犯の適用はそんなにハードルは高くなくて、今はすぐに上と紐付けられてしまうから、簡単には「やれ」って言えないんです。山一抗争の頃とは時代が違う。

溝口 組織犯罪処罰法の共謀罪が成立して間もない頃に、新聞の解説記事を読んだけど、殺人や傷害、強姦とかは出てこない。どういう犯罪を想定しているのかよくわからないんですよね。

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鈴木 だから、共謀罪なんてあんまり関係なくて、勉強したっていう建前だけでしょうね。親分に「こういう勉強会をやりましょうよ」と吹き込む組員がいて、親分も「おう、やろう」と。

溝口 取り巻きの弁護士に焚き付けられたりするのだろうけど、みんな真剣に考えていない。具体的に問題が起きていて、切羽詰まっているならともかく、こんなペーパー配られただけで身を入れて勉強できるかと言われてもできないと思いますよ。我々だってできないですよ。

鈴木 ある山口組の二次団体は、毎日のニュースのなかから「暴力団」というキーワードで検索した記事をプリントアウトして、全国の傘下にFAXで送っていました。いったい何の意味があったんだろう。

「無法者」が法に頼る自己矛盾

溝口 ヤクザのなかには、法律に詳しい組長がいる一方で、「ヤクザ風情にもかかわらずワシらが法律に頼っていいのか」という伝統的なヤクザ美学に縛られている人間も多い。世の中の人たちは「ヤクザの分際で何だ!」という目で見るという“ヤクザ分際論”がある。ヤクザ側にとっても、「こんなこと言ったら世間のいい物笑いのタネだ」という伝統的な美意識がある。

鈴木 それはありますね。

溝口 そもそも、英語では「アウトロー」、日本語では「無法者」というように、法の埒外にいるというのがヤクザの出発点なんだから。

鈴木 にもかかわらず、法に頼ろうとするのは、自己矛盾と言えなくもないですね。

溝口 憲法14条の「法の下の平等」を守れと言いながら、憲法12条の「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」というのを暴力団は守ってないからね。

鈴木 溝口さんが論破しないでください(笑)。