昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2021/04/17

北米外の選手がNFLの舞台に立てない理由は…

 アメリカの国技ともいえるアメフト。

 その競技で北米以外の選手が最高峰のNFLの舞台になかなか立てない理由は、実はプレーの実力や身体能力だけではないと李は考えている。

 最大の要因は「語学」と「コミュニケーション能力」なのだという。

「ただ英語が喋れるというだけではなくて、フットボールの英語は『フットボール・イングリッシュ』と言って、全く違う認識なんですよね。僕は英語もネイティブではないので100%ではないですし、会話の中にはスラングや聞いたことがないワードがでてきたりする。それを瞬時に理解できないといけないんです」

 

 実際に、テレビのインタビューなどで李の話す英語はかなり流暢なものだ。アメリカで生活に困ることもほとんどない。それでも、ただ単に「英語ができる」というだけでは足りないのだという。

「日常生活では支障はないですし、コーチやスタッフと話す分には問題ないんです。でも、例えばロッカールームなどでなまりやスラング交じりの早口で会話しているなかに飛び込むのは、かなり難しい。どうしても『?』となる瞬間があるんですよね。

 プレーの面でも一番の課題なのは、プレーコールを正確に聞き取れることと、QBがパッと何かを言った時に、それを理解しきれること。自分のプレーを遂行するのはもちろんですけど、相手に対するアジャストについても、英語で言っていることを理解して瞬時に動けるようにするのが難しいと思います。でも、そこはもう、実際にフィールド上で経験していかないとできないことだと思うので…」

 例えば他の競技であれば通訳をつけたり、ある程度の英語が理解できれば戦うことができるのかもしれない。

 だが、戦術が複雑で流動的なプレーの中、フィールド上で選手同士の直接指示が多いアメフトにおいては、言語理解とともにチームメイトとの信頼関係が絶対的に必要になってくる。また、特にアメフトにおいて外様であるアジア人選手に向けられる視線は決してやさしいものではない。その状況を打破するには、相当の語学力を身に着け、恒常的に多くの選手と気持ちを通じ合わせておかねばならない。おそらく、これまでの日本人選手に最も欠けていたのがその要素だ。

©️AFLO

異文化が当たり前だった幼稚園時代

 だからこそ李には大きなアドバンテージがあるように思う。

 李はもともと幼稚園でインターナショナルスクールに通っていた。そのため、周囲には国籍も、言葉も違う友人たちがたくさんいたという。ところが、小学校で日本学校へ入学すると、突然自分が「異質なもの」とされる居心地の悪さがあった。