見せ金1000万円を持ち歩く宝石商
犯行のきっかけは、担保流れの新車を売りさばく自動車金融屋に“獲物”を紹介されたことだった。
金融屋の客の1人に、安い宝石を高く売りつける宝石商(36歳)がいた。見せ金のために現金1000万円をアタッシュケースに入れて常に持ち歩いていると聞いた。バーで待っていると、首や腕に金ピカの鎖を付けた宝石商は、確かに黄金色のアタッシュケースを持っていた。それが獲物に見えて頭から離れなくなる。
同じ頃、在日韓国人の李(48歳)という男から、違法ポーカーゲーム屋を開くに当たり、「警察のガサ入れ情報が欲しい」と協力を求められた。情報を取れる自信はなかったが、「半年やれば1億、2億になる」と言われてその気になった。
この話が進まない中、「人を殺してでも金を手に入れたい」と李に話すと、10億円を超える負債を抱えて倒産し、「金になるなら少々ヤバイことでもやる」と言っている不動産業者(35歳)を紹介された。
澤地、李、不動産業者の3人は、宝石商を騙して金を奪う計画を立てる。
山中湖の別荘で
宝石商はサファイアの指輪を2個見せ、「1個1000万円」だと話した。澤地らはせいぜい1個数百万円だろうと思いながら、「厚木市に住む大金持ちに話せば、指輪2個を担保に6000万円を引っ張れる」と持ちかけた。宝石商は見せ金の現金を持参した上で交渉に臨むことを了承した。もちろん大金持ちなど存在せず、不動産業者が扮することになった。
澤地と李は宝石商を車に乗せ、大金持ちに扮した不動産業者が途中で合流し、不動産業者が所有していた山中湖の別荘へ向かった。別荘に着いて、しばらく架空の交渉を続けた後、「芝居はもうやめだ。このバカ野郎」と澤地が宝石商に言い放つ。
立ち上がろうとする宝石商を澤地が押さえつけると逆に頭突きをくらい、加勢した李もまた頭突きをくらって鼻血を出した。乱闘になったが、宝石商が倒れ込むと、口の中に布を詰めた。その口から、「……助けてくれ」と弱々しい言葉が漏れた。殺害後、澤地らは現金と宝飾類を奪い、遺体を床下に埋めた。
澤地が割烹料理屋を閉店して1年あまり、李と知り合って3カ月、李に不動産業者を紹介されてわずか10日のことだった。