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 印象的だったのは、お会いした人がみんなすごく「ロジカル」だったことです。MTVとはまったく逆の雰囲気でした。

 MTVは芸術作品を作ろうとするクリエイター的な空気が色濃い、いわば「右脳」で動いている会社で、そういうところに魅力を感じていました。一方、マイクロソフトは「左脳」で動いている会社です。ものすごくロジカルで、数字で語る。それまで「右脳」にどっぷり浸かっていたぼくにとっては、ものすごく刺激になりました。

とにかく「スコアカード」が命

 マイクロソフトは「オペレーショナル・エクセレンス(改善し続け、運営方法を磨き上げること)」を追求する会社です。社内には「スコアカード」というものがあって、その管理に命をかけていました。

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 スコアカードというのは、自分が担当している事業の「健康診断」みたいなもの。日報、週報、月報、四半期報告などの報告は、すべてスコアカードに基づいておこなわれます。

 ぼくは「MSN」というポータルサイトサービスを担当していました。この事業では簡単にいうと、ページビューが上がれば広告の売上が上がります。するとスコアカードには「ページビュー」という指標と「広告売上」という指標が組み込まれます。

 

 そして目標の達成率によって、「赤」「黄」「青」と信号のように色づけされていく。スコアカードの結果が一定数以上「青」でないと、その部署のマネジメント責任者の評価が悪くなったりするわけです。

 人間の脳が同時に考えられる数字は、21個が限界だと言われているそうです。人にもよるとは思いますが、一般的には21個。だからスコアカードにも21の指標がありました。それを毎日、毎週、毎月見ていくわけです。

 スコアカードのエクセルを見ていくと、あるひとつの数字を作るのに、だいたい1000個ぐらいの計算式が使われています。数字が21個なので、約2万1000の計算式で1枚のスコアカードが作られていることになります。

一転、「工場長」のような仕事に

 ぼくの仕事は、その「スコアカード」の数字を毎日のように見て、管理すること。確認しなければいけない数字が膨大なので、なんだかもう目が回りそうでした。

 数字が未達の項目があれば、関係する部署に「なぜこれができていないの?」「なにが課題なの?」と追求して、改善させていく。いわば「工場長」のような仕事でした。