スコアカードの数字を出すための要素は「量販店でWindowsのパッケージが何本売れたか?」とか「いつキャンペーンをやって、それが売上にどう影響したか?」といったことです。一見するとただの数字なのですが、それが実は「どう量販店さんとパートナーシップを組んで、店頭展示をしてもらって、集客をするのか」という、「ハードの部分」とつながっている。その結果がスコアカードの数字という「ソフトの部分」に反映されていくのです。
MTVのときのぼくだったら、きっと店頭に出て行って、どういうマーケティングをしているのかを確認していたと思います。でもマイクロソフトのぼくの立場では、それは他の誰かがやることでした。ぼくは本当に裏方で、そういうマーケティングの結果を受けて、店頭での広告予算や販促予算を本社と交渉し、事業を回していく。まさに仕事が一変しました。
なんでもソフトウェアにする会社
人事査定でも驚くことがありました。
当時は日本だけで200人ぐらいの部下がいたのですが、その200人の人事査定をするためのツールを、マイクロソフト社内で独自に作っていたのです。
「予算をどう配分するか?」「この人の給料はいくらか?」というのを、ゲージひとつで変えられる。そして、その結果が正しいかどうかを、また別のソフトウェアで検証する。
ようするにマイクロソフトは「なんでもソフトウェアにする会社」でした。
人事も、マーケティングの管理も、すべてソフトウェアでおこないます。ソフトウェアを売っている会社だから、当たり前といえば当たり前なのかもしれません。
でもぼくにとっては新しくて、すごくおもしろい部分でもありました。
世の中はすべて「数字」で形成されている
それだけ徹底していると「人の意思が介在するところはあるんですか?」と聞かれることもあります。マイクロソフトの考え方は「世の中はすべて数字で形成されているので、極端にいうと、言語の違いすらも関係ない」というものです。「数字は世界共通でウソをつかない」という考えだったのです。
とはいえ、ときにはスコアカードの計算式が間違っていたりすることもありました。数字がおかしくなっているのに気づいて、担当者に連絡すると「ああ、ごめんごめん」と。そんなときは「数字もウソをつくじゃないか」と思ったりしましたね(笑)。