今回の衆院選。私の争点は「カジノ」である。

 カジノ合法化の話は1990年代に始まった。その後、石原慎太郎元都知事がお台場カジノ構想をブチあげ、機運が高まったものの、それからさらに十数年を要し、昨年やっとカジノ基本法(統合型リゾート整備推進法)が通ったところ。

 私自身、カジノ合法化を訴えてきた一人だが、日本がもたもたしている間にシンガポールでもカジノが合法化され、ビジネスチャンスを奪われるのは、見ていて実にもどかしかった。

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ようやく日本版カジノ実現が近づいたが…… ©iStock.com

 基本法成立までこれほど長引き、今もってカジノの詳細さえ決まらないのは、反対派のみならず賛成派の政治家やお役人までもが、カジノの現実をあまり知らずにやっているからだろう。8月にIR推進会議によって発表された法案の原案にも現実離れした点があるなど、「キャッチボールもしたことがない人がプロ野球のルールを決めている」かのように見える。

 これまでの国会論戦などから、カジノに対する各党のスタンスをまとめると次のようになる。「賛成」が自民党、公明党、日本維新の会、希望の党、「反対」が共産党、社民党、立憲民主党となるが、政党ごとに中身が微妙に異なっている。その違いについて、私の独断と偏見に基づいて解説してみたい。

 まずは賛成派から。

「草野球はしたことがあるし、ストライク3つでアウトくらいは知っている。いざとなればイチローを連れてくればいい」くらいの気持ちでプロ野球の監督をしているのが自民党だ。

 彼らには焦りがある。本来であればもっと早く合法化の道筋をつけられたはずが、政権を失うなどの頓挫があり、シンガポールに先を越されただけでなく、中国人富裕層のカジノブームを取り込むチャンスをすっかり逃してしまったからだ。

成功したシンガポールのIR・マリーナベイサンズ ©iStock.com

 多くの賛成派をかかえ、現在カジノに最も前向きだが、利益誘導を期待する各方面からあまりに多くの情報が寄せられ過ぎたことで思考停止になり、いいカジノを作ることより反対されないカジノを作るという、事なかれ主義に陥りはじめている。

 それを助長しているのが連立与党の公明党だ。「ボールもバットも触ったことがないし野球にも興味ないけど、お友達の自民党がどうしてもやりたいっていうから」と言って一緒にベンチ入りし、余計な横やりで采配の足を引っ張っている。

 支持母体の創価学会婦人部がかねてからカジノに反対なのはよく知られているように、公明党には諸手を挙げて賛成の立場をとりにくい事情がある。そこで、「賛成はするけどあくまでブレーキ役になる」として、ギャンブル依存症を防ぐための対策を盛り込むという条件つき賛成の立場を取っている。だがそれは、日本人及び日本在住外国人には入場の際に(1万円とも噂される)高額な入場料を課すといった代物だ。世界のカジノ関係者が揃って首をかしげる根拠のない内容で、カジノが出来る前からケチをつけてしまっている。

 そんなところに、「野球で街を盛り上げるノウハウもあるし自信もある」と言って、さかんにベンチ入りをアピールしているのが日本維新の会だ。かつて代表だった橋下徹前大阪市長が、ギャンブル、風俗などを「すべて大阪が引き受けます」と語ったこともあるように、大阪人を中心とした日本維新の会には、そうした娯楽に明るい人がいるのも事実。党代表の松井一郎氏が大阪府知事でもある点も誘致における強みの一つだ。

 ちなみに、この党がカジノに熱心なのには背に腹は代えられない事情もある。夢洲(ゆめしま)という広大な埋め立て地が活用されないまま放置されているからだ。すでに多額の費用をつぎ込んだこの土地を生かすには、たんなる商業施設では追いつかず、カジノと大阪万博の相乗効果で起死回生を狙っているというわけだ。

 そこに現れたのが「プロ選手の育成なんてお金も時間もかかるから、アマチュアを集めて奇抜な試合をすれば、テレビも放送するし、みんな見にくるわよ。目立てばいいのよ、目立てば」というノリで政界の勢力図を塗り替えている小池百合子都知事率いる希望の党だ。

 急ごしらえのため党としてカジノ政策には言及していないが、代表の小池氏は元々カジノ議連のメンバーでもあり、バリバリのカジノ推進派。また、候補者の多くを占める旧民進党議員はおおむねカジノ賛成の立場を取ってきていることから、その方針が踏襲されるとみてよい。