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2021/04/20

source : 文藝春秋 digital

genre : エンタメ, 芸能, テレビ・ラジオ

「本物かまがいものか、楽しみだね」と言い放った志村けん

 2020年5月1日には、志村が俳優として出演したNHK連続テレビ小説「エール」の第25話が放送。「志村けんさんは3月にお亡くなりになりました 謹んで哀悼の意を表します」というオープニンタイトルのテロップと〈志村けん〉のクレジットにこみあげた。

 志村が演じたのは、日本作曲界の大重鎮である小山田耕三。秘書から主人公・古山裕一(窪田正孝)の国際作曲コンクール二等受賞の記事が載った新聞を渡されるや、「それがどうした……」とうっとうしそうに一瞥をくれ、「本物かまがいものか、楽しみだね」と言い放って新聞を投げる。笑いを完全排除し、凄まじい威圧感を放つ〈俳優・志村けん〉の演技に圧倒された。それと同時に、本格派俳優としても活躍するであったろう彼の姿を追えなくなった事実に悔しくてたまらなくなった。

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 2020年5月16日には、幻に終わってしまった山田洋次とのタッグ作『キネマの神様』の主演を志村に代わって沢田研二が務めるというニュースが報じられた。それを知るまでは「志村の代わりなんていない」と思っていたが、あの〈鏡コント〉などで息の合ったコンビネーションを見せたふたり、似ていないのに似ていたふたりだったので、沢田研二登板にはおおいに納得させられた。

「東村山音頭」が聞こえなかった2020年の夏

 YouTubeでは『志村けんのだいじょうぶだぁ』再編集版の続編が次々と配信され、地上波では1996年の『志村X』から続いていた深夜枠番組の名コントを志村と関わりの深かった人物と共に振り返る『志村友達』がスタート。上島竜兵、研ナオコ、川上麻衣子、いしのようこ、加藤茶など、“わかっている”ゲストのチョイスと各々が語る志村秘話に笑って泣いた。

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 筆者が暮らす東村山では、盆踊りで「東村山音頭」を延々と流されるのがセオリー。といっても、流されるのは志村のバージョンではなくて三橋美智也が歌ったオリジナル版(志村版はこれのカバー曲となる)なのだが、2020年の夏は新型コロナウイルスの影響で近所の公園で毎年開かれていた盆踊りも中止に。それまでは聞こえようと聞こえまいとなにも感じなかったのに、しかも志村バージョンでもないのに、いざ町に「東村山音頭」が響き渡らないとなると地味に辛くなるのには自分でも驚いた。これも自分のなかの〈志村魂〉が、なにかしら反応していたのだろう。

 2020年9月29日、志村けんの銅像建立のクラウドファンディングが始まった。「自分のなかに志村がいるから、銅像を建てるといってもなぁ」と頭によぎったものの、〈バカ殿〉〈変なおじさん〉〈ひとみばあさん〉〈いいよなおじさん〉〈デシ男〉〈芸者〉〈ヒゲダンス〉〈プレーンの志村〉など膨大なキャラ&ポーズからどの志村が銅像にされるのかとワクワクしてしまったのも事実。