志村けんさん(享年70)の所属事務所・イザワオフィスは、昨年4月18日からYouTubeチャンネルで公開していた動画『志村けんのだいじょうぶだぁ』#1~#10について、当初の予定通り、4月17日に公開を終了した。3月2日放送の『志村友達』(フジテレビ系)では、タレントの優香(40)が志村さんや共演したコントへの思いを涙ながらに明かしたことも話題を呼んだ。志村さんの突然の訃報から1年あまり。東村山市在住のライター・平田裕介さんがこの歳月を振り返る。

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 どこからともなくカラスの鳴き声が聞こえると、続けて脳内で「♪カ~ラス~なぜ鳴くの~カラスの勝手でしょ♪」と鳴り響く。

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 甥っ子と九九を唱えていて、2×1=2(にいちがに)、2×2=4(ににんがし)、2×3=6(にさんがろく)と続いていくと、脳内で「♪ニンニキニキニキ♪ニンニキニキニキ♪ニシンが悟空」と『飛べ!孫悟空』の挿入歌「ゴーウェスト」が鳴り響く。

志村けん ©文藝春秋

 スマホのカメラを向けられると条件反射(無論、時と場をわきまえるが)で「アイーン」をしたくなる。

 無性にスイカの“早食い”にチャレンジしたくなって、スーパーへと走りそうになる瞬間がいくつかあった。

しばらくは〈なにか〉が消えた感覚に陥ってしまった

『8時だョ!全員集合』、『ドリフ大爆笑』、『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ』、『志村けんのだいじょうぶだぁ』、『天才!志村どうぶつ園』……。どの時代にも志村との出会いを果たす番組が放送されていたし、なにより〈バカ殿〉〈変なおじさん〉〈ひとみばあさん〉「アイ~ン」「だっふんだ」といったキャラクター、ギャグ、決めゼリフは、どの世代にも刺さる魅力とパワーがあって不朽のものとなっている。だからこそ、老若男女を問わず誰もが〈志村〉という名の魂、もしくはDNAみたいなものを抱え、受け継いでいるはずだ。

ひとみばあさん ©文藝春秋

 それゆえに、あの2020年3月の終わりからしばらくは自分のなかの〈なにか〉が消えた感覚に陥ってしまった。仕事をしていても、ふいにジワ~と涙が出てくる。テレビをつけると、ニュースやワイドショーで追悼していてブワ~と涙が出てしまう。報道陣に囲まれて気持ちを問われた志村の兄が「察してください」と語り、その息子さんたち(志村の甥たち)が「なんで死んじゃったんだ」と号泣する姿を目にした時は、こちらも突っ伏してウォンウォンと泣きそうになった。