昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2021/04/26

「ネパールでは、ダルとライスだけでなく、全ての料理が基本的におかわりできます。好きなだけ食べてお腹いっぱいになるというのが、ダルバートなんです」(タラさん)

実は新大久保のネパール人は大きく減っている

 ではネパールより物価の高い日本で、おかわり自由の500円ダルバートが、なぜ可能なのか。

「500円ではさすがに利益は出ませんが、特別に安いのはその1品で、他のメニューで利益を出しています」(タラさん)

 こうして、困窮するネパール人向けに誕生したムスタングの500円ダルバートは近隣で話題となり、多くのお客が集まった。多い日は1日に約200回も注文が入ったそうだ。

大久保界隈だけでなくネパールでも珍しいという、アマルディープの目玉焼きつきダルバート(メニュー名はカナセット)。(筆者提供)

 その後周囲の店も続々と500円ダルバートをメニューに採り入れ、いつしか新大久保界隈のネパール料理店の大半が、おかわり自由のワンコインダルバートを出すようになる。その流れは街の外にも波及し、池袋や日暮里などネパール人が多い他の街でも、ワンコインダルバートが見られるようになった。今や沖縄にも、一般客には500円で、学生には400円で提供するダルバートがあるそうだ。

 一方、新大久保界隈の格安ダルバートカルチャーは現在、次なるタームに入っている。店の最も安いダルバートを、500円から600円前後に改定する店が多くなっているのだ。今なお500円でダルバートを出すのは、10店舗ほどに減っている。前出のタラさんはこう説明する。

「私は食材店をやっているのでよくわかりますが、お肉も米も油も全て、数年前より値上がりしています。材料費が上がれば、値上げするのは仕方ないことです」

こちらも食材店の裏にある“隠れレストラン”、ソルティーカジャガル。(筆者提供)

 また、新大久保界隈のネパール人が減っていることも、値上げの一因だ。数年前にネパール人に対するビザが厳しくなり、日本に来るネパール人が少なくなった。いい職を得られないなどの理由で、帰国したネパール人も少なくない。またコロナ禍が起こり、新たな留学生や出稼ぎ人が日本に来れなくなっている。

 実際、新大久保と大久保がある新宿区の在留ネパール人は、2018年5月の3861人をピークに減っていて、2021年4月現在で2421人となっている。

※新宿区の住民基本台帳による