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500円ダルバートがなぜ誕生したのか

 新大久保界隈で500円ダルバートを最初に出した店は、2015年に開店したムスタングと言われる。カレーライス1皿が1000円以上することも珍しくなくなった現代にあって、ワンコインでおかわり自由という驚きのコストパフォーマンスが実現した背景には、同店の特殊な事情がある。ムスタングの関係者はこう話す。

ネワーダイニングの500円ダルバート(メニュー名はチキンタリセット)。ダル・ライスだけでなく、手前のアチャールも山盛りのおかわりをくれた。(筆者提供)

「レストランは2階にありますが、実はビルの2階から5階までを店が借り切っていて、3~5階をネパール人用の寮に充てています。東京に来たばかりで住む家が見つかっていない人や、お金に困っている人などが路頭に迷わないよう、一時的に住まわせています。だから寮というか、“仮宿”や“一時避難所”のようなものですね。また界隈には、寮生以外にも、留学生をはじめお金に困っているネパール人がたくさんいます。

 彼らに少しのお金でお腹いっぱいになってもらおうとメニューに入れたのが、ワンコインダルバートです。実は困っているネパール人には、500円ではなく400円ほどで提供しています。部屋代や食事代は、もしすぐに払えなければ、後払いでもOK。そして状況がよくなって自活できるようになったら、寮を出てもらっています」

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 ムスタングの経営者の1人で、北区十条で食材店「エベレストストア」を経営する、ドゥンガナ・タラさんは、“寮費”についてこう話す。

「部屋代は1ヶ月3万円以下で、ムスタングでの1日2回の食事を付けても、計5万円ほどで収まります。最低限の生活道具は揃っていて、光熱費もかかりません。入寮者には、洗濯洗剤だけ自分で用意してもらっています」

ムスタングの経営にも関わる、十条・エベレストストアのタラさん。(筆者提供)

 “寮”には40人近くのネパール人が生活することもあるが、今は10人ほどに落ち着いている。

 ちなみにダルバートの“おかわり自由”は、ネパール本国の風習にならったスタイルだ。