ズバ抜けてキツかったこと
――体力、気力、お金、どれも大変だったと思いますがズバ抜けてキツかったものはなんですか?
渡辺 プライベートが皆無だったことですね。8歳でも、面倒を見ないといけないことがいっぱいある。あと、トイレにアユが入っていてトイレットペーパーがないとか言われると、僕が入っていいのだろうかと考えちゃったり。もう親子なんだからと割り切って入っちゃいましたけど。
あとは食べ残しをどうするかとか。もったいないから残りを食べたいんだけど、「これ、よそのガキが食ったものなんだよな……」とか躊躇しちゃうんですよね(笑)。そこを超えないとどうしようもないので、食べましたけど。いまは、ぜんぜん平気になっています。
ヘルパーさんがしっかり様子を見ていてくれているんだなと安心
――血の繋がっていない父娘となると、どういった言動が性的虐待に繋がってしまうのか気になってしまいそうですね。特にふたり暮らしだったわけですから。
渡辺 風呂に入れたり、着替えを替えるのを手伝う場面がありましたからね。そこでアユが恥ずかしがったり、警戒するようだったら、こっちもそれに合わせて対応しようと考えてたんですけど、まったく、そういう感じにはなりませんでした。
あと、これは3人目が生まれてからなのですが、自治体が赤ちゃんがいる家庭向けに提供している「子育て応援券」を利用して、ヘルパーさんを呼んだんですよ。家のことをいろいろとやってくれるわけですけど、同時に男親が娘になにかしていないかもしっかりチェックしている。
ヘルパーさんがいる時に、「でっかいケツしやがって」と寝っ転がっているアユのお尻をパンと叩いたんですよ。そうしたら後で「カワイイお尻してるね」と言いながら触っていたとヘルパーさんが報告したようで、すぐに子供相談課みたいな方がやってきて「こういう話を聞いたんですけど、大丈夫ですかね?」と軽く取り調べられました。きちんと様子を見ていてくれているんだなと思って、逆に感心したというか、安心しましたね。実際に性虐待をしている例もあるらしいので。
――そういったチェックは納得できますけど、育児の様子を漫画で描いていたりすると変なチェックというか批判も入りますよね。『父子家庭はじめまして』第3話で、アユさんのお弁当をランチパックにしたことを描いたら批判されたそうですが?
渡辺 まぁ、やってみればわかるよと。でも、アンチの声が出てくるというのは反応がいい証拠なので漫画家として嬉しくもあるんです。まぁ、子育ての問題に正解はないですから。
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写真=深野未季/文藝春秋