読解不能な日本語を書きなぐったリアル中華料理屋の看板やメニューのごときクオリティ
またオンライン小説業界に目を向ければ、大手企業の閲文集団(China Literature)に東京23区の人口と同じくらいの890万人が作者登録しているといいます。また特に中国で新型コロナが感染拡大した昨年2月、3月に、20代の若者を中心に暇なので小銭稼ぎもかねて思いの丈をオリジナル小説にぶつけたわけですよ。1月~3月には33万人が新たに登録し、トータルで52万タイトルが登場しました。もうスケールが違いすぎますし、また爆速翻訳したくなる土壌があるのはわかっていただけたかと思います。
ただクオリティはというと、翻訳以前に小説の時点で正直ダメな作品が多い。素人が勢いのままに書いていることもあり、話が面白くない程度ならいざ知らず、そもそも話に整合性がないとか、何を書いているのかわからないといった、まさに粗製乱造が行われています。
私の友人がどこから仕事を手に入れたのか、中国人の自作小説の翻訳校正バイトをやっていますが、日々数千数万文字の対訳の日本語と原文の中国語を読みながら、「人力翻訳だといろいろと残念」「機械翻訳だと文法は間違ってないのに何言ってるかわかんねえ」と嘆いています。日本語に翻訳した文もまた、読解不能な日本語を書きなぐったリアル中華料理屋の看板やメニューのごとく、日本人ネイティブに読ませられるクオリティではないのです。
それでも受け入れられる中国のインディーズ小説
中国の小説を翻訳する中国人Deathblade氏(ペンネーム)もまた、「多くの小説で中国風味の珍奇な英語Chingishがかった翻訳となっていて、しばしば理解できないでしょう」と中国メディアにコメントしています。
それでも中国のインディーズ小説が受け入れられています。
中国の定番の小説ジャンルに「武侠」と呼ばれる中国中世世界が舞台の、武術バトルあり恋愛あり笑いあり涙ありのファンタジージャンルがあります。権威あるオックスフォードの英語辞典にも、「wuxia(武侠)」が登録されているほどメジャーなジャンルです。
このwuxiaで検索すると、英語のWuxiaWorldというサイトがあり、多くの読者がいることが確認できます。またGoogleの検索トレンドを調べると、なんとアフリカのナイジェリアなどで武侠小説が検索されていることがわかります。