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 ハイテク係が一定の期間内なら過去の書き込みも遡って見ることができる特殊なソフトを使ったところ、番組が配信された3月末から自死までの約2カ月の間に、木村さんのツイッターアカウントには600以上のアカウントから1200件近いメッセージが寄せられていた。このうち、捜査一課は約200アカウントによる約300件の書き込みが誹謗中傷に当たると判断した。

米Twitter社は「そんな微罪で情報は明かせない」と開示を拒否

 しかし、ここで“1つ目の壁”に阻まれることになる。捜査一課は名誉毀損罪(3年以下の懲役など)での立件を考えていたが、条件を満たす書き込みが見つからなかったのだ。ある捜査員は、

「名誉毀損罪が成立するためには、ウソでもホントでもいいから『部長は部下にセクハラをしている』といったような具体性のある書き込みが必要になる。でも、木村さんに対しては『死ね』や『気持ち悪い』といった抽象的な書き込みばかりだった。誰もがちょっとした感情を気軽につぶやくSNS時代らしい現象ではあるのだが……」

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 とため息を漏らす。

木村花さんツイッターより

 捜査一課に残された道は、刑法の中で最も罪が軽い「侮辱罪」(1万円未満の科料など)での書類送検しかなくなった。その方向で捜査を進めると、次は“2つ目の壁”にぶち当たってしまった。匿名の書き込みをどこの誰がしたのか特定するため、米ツイッター社に投稿者の情報を開示するよう問い合わせたものの、応じてもらえなかったのだ。

「アメリカにはこちらの侮辱罪に相当する概念がないらしく、しかも、そんな微罪で利用者の情報を明かせないと、非協力的なスタンスだった。捜査は完全に行き詰まってしまった」(捜査関係者)