昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2021/05/01

genre : ニュース, 社会

事件をイベントみたいに楽しむ

 坊主頭を金髪に染めた男性も言う。

「前に記者の人が、『こんなに事件を楽しんでる地域は初めてだ』って言ってた。川崎って都会のように見えるかもしれないけど、それは駅前だけで、奥に行くと何もない。やることっていえば、公園に溜まるぐらい。退屈だから、事件をイベントみたいに考えてたヤツも多いと思う」

「あと、人のつながりが狭いから、何かあると情報がLINEであっという間に回るよね。『知ってる?』『まじか!』って。あの事件のときも、『犯人、こいつでしょ』ってすぐに写真が送られてきた」

2015年2月、中学1年生の少年が殺害され、遺体が遺棄された川崎区の多摩川河川敷 ©細倉真弓

 女性は整えられた爪がピンク色に光る指先でiPhoneの画面を操作すると、1枚の写真を見せた。そこには、彫りの深い顔立ちで笑う少年が写っていた。

「私、こいつのお姉ちゃんと友達なんですよ。だから、速攻で『噂、回ってるけど?』ってLINEで聞いたら、『いや、あいつ、その日は家にいたよ』って返信があって。でも、お姉ちゃんは六本木に通っちゃってるんで、夜中、家にいるはずない。『絶対、嘘でしょ!』みたいな。ウケるよね」

「オレは、毎朝、事件が起こったところをランニングで通るんですけど、献花の場所はどんな面白いものを置くか、大喜利みたいになってましたよ。コンドームとか。あと、ごそごそしてる人がいるからなんだろうと思ったら、ホームレスがお菓子を根こそぎ袋に詰めてて」

 男性はそう話すと、真剣な顔で肉を追加していいかと聞いた。

都会の荒野に芽吹いた才能

 一方で、そのような都会の荒野から、新しい生命が芽吹くように登場した才能もある。“BAD HOP”だ。

 I'm a Kawasaki South Side Wild Boy
 Kawasaki South Side Bad Boy
 火の粉振り払っていくBoy
 カマ目つぶったBitch Come Boy
 赤く染まる目が映すBAD HOP ERA
 逃げ道なんてのねぇな 日々汚れてくぜ手が
 ガキの頃からそうさ血の付いたカネでメシを食う
 「あの子はヤクザの倅、遊んじゃ駄目」と友達の親が言う
 カエルの子はカエル Ha? 鳶が鷹を産む
 腹をくくったガキが目を赤く染め暗闇を歩く
 ほら居場所を出ればダリい クズどもから白い目を浴びる
 イバラで血だらけの足で歩く真っ赤に染まる街
 東大より高い川崎Streetの偏差値
 授業料もビッチじゃ計り知れねぇ見れば誰もがめまい起こすぜ Bow
 14の誕生日は単独房で過ごし
 外に出れば戻ってくゴロツキの集う裏路地
 隣に目ギラつかせた仲間がいた
 BAD HOP ERA 発祥地は川中島

――BAD HOP「Stay」G-K.I.Dのパートより

z