JAL社員寮の地主は後援会会長
関空勤務のための社員寮といいながら、空港からはかなり遠い。会社側はわざわざ通勤のためにバスを仕立てたが、それでも一時間は優にかかる。「まるで集団疎開みたい」と社員からの評判は最悪だった。なぜ、こんな辺鄙な場所に巨大な社員寮を建設したのか。日航タウン計画を立てた理由は、容易に察しがつく。
もともと建設用地の地主だったのが、二階俊博後援会「俊友会」の会長である。そこには当然のごとく二階本人の影がちらついた。県議時代から二階の支援者である俊友会会長は、設計業者でもあった。そして二階が運輸政務次官のころ、社員寮の建設計画が決まった。
くだんの社員寮の敷地が売買されたのは1991年2月のことだ。JALと後援会長との土地の売買交渉はわずか1年足らず。あっさりと決まった。そんなに短時間の割に、JAL側の購入価格がバカに高い。敷地は11万平米で、相場は50億円程度だ。JALはそれを152億円で購入した。実に相場の3倍である。JALの経営破綻後、むろんこれが問題になる。
2010年8月、JALの倒産要因を調査したコンプライアンス調査委員会の委員長で、元最高裁判事の才口千晴がこう報告書に書いた。
〈価格の適正を含めて不自然な点があるといわざるを得ない〉
2010年8月、JALの倒産要因を調査したコンプライアンス調査委員会の委員長で、元最高裁判事の才口千晴がそう報告書に書いている。
箸袋に走り書きされた「50億円」
そして、くだんの土地の売買交渉で、二階自身や系列の和歌山県議が仲介の労をとったことまで明らかになる。二階の関係者らは、和歌山市内の料亭でJAL側と密会を重ねた。はじめのころの会合で、JAL経営陣が50億円という買い取り希望価格を箸袋に走り書きし、二階系の県議に提示したという。すると、県議は思わず怒鳴り、席を立った。
「この無礼者が」
二階の関係者たちは、200億円という法外な買い取り価格を要求した。しかし、さすがにそれでは折り合いがつかない。交渉の落としどころが、152億円だったのである。
この一件は2010年10月28日の朝日新聞も、〈日航、元県議側に4.5億円 関係者証言 和歌山寮用地の仲介手数料〉と題して次のように報じている。
〈日本航空が寮・社宅用地として、自民党の二階俊博・元運輸相の後援会幹部(当時)から和歌山市の山林を高値で購入する際、大手ゼネコンを経由して「仲介手数料」として約4億5千万円を支出していたことがわかった。ゼネコン関係者は、手数料を、二階氏と親しい元和歌山県議の関係先に入金したと証言している〉