「空港誘致のきっかけは、エアバス製の中型ジェット機導入でした。それまで空港へはJASがマクダネル・ダグラス製の小型機MD87を飛ばしていたのですが、134人しか乗れない。二階後援会の幹部が、それでは小さすぎると言い出したのです。そこで、163人乗りのMD81や160人乗りのMD90を飛ばせないか、と。しかし、たとえばMD90を飛ばすには、2000メートル級の滑走路が必要なのです。それなら、いっそのこと新しい空港をつくれ、となった。それで、古い南紀白浜空港の近くに新空港を建設することになったようです」
JALの元空港担当者が空港誘致の経営をそう明かした。空港建設という大事業にもかかわらず、いかにも手軽な発想なのである。00年9月、2000メートル滑走路が完成し、供用を開始する。
だが、現実的には、和歌山の空港にそこまでの利用客はいない。02年以降、JAL・JASの統合が進められ、新空港をJAL便が離発着するようになっても、空港利用者はわずかに年間15万人に届くかどうかに過ぎなかった。そんな赤字空港にもかかわらず、二階サイドでは、さらに次のような要求までしてきたという。JALの担当者が続ける。
「統合前のJASは、エアバスのA300を持っていました。当時のJASでいちばん大きな飛行機でした。そこで、二階先生は、『ここにはA300型機が降りられないのか』という。しかし、新しい南紀白浜空港には2000メートル滑走路が1本だけしかありません。A300は辛うじて着陸できるけど、離陸ができないのです。だから、慌てて対応しなければなりませんでした」
現実の空港需要とはかけ離れた無茶な提案
A300は300人乗りを想定し、エアバスが命名した世界初の双発エンジン型ワイドボディの中型機だ。実際に航空各社は280人乗りとして使用しているが、それでも従来和歌山に飛んで来ていたMD87と比べると、二倍以上の輸送力がある。二階にしてみれば地元活性化のつもりかもしれない。だが、現実の空港需要からすると、かなり無茶な提案といえる。空港担当者が指摘する。
「滑走路が2000メートルあれば、166人乗りのMD90が離発着できます。A300でも、理論的には滑走路に降りられますが、飛び立つには、滑走路の端まで行ってクルッと飛行機の向きを変えてやらないといけない。しかし新しい南紀白浜空港は、そのためのターニングパッドを備えてないので、離陸できないのです。そう説明すると、二階先生は『じゃあ、つくればいいじゃないか』と、いとも簡単に言う。結局、ターニングパッドを設置しました」