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一度きりのフライト

 そうして、羽田から飛び立ったA300の第一号チャーター便が、真新しい滑走路に降り立った。乗っていたのは、二階後援会の幹部たちだ。

「二階後援会を乗せたA300チャーター便は、新しいターニングパッドを使って南紀白浜空港から中国の済南に向かいました。A300を飛ばすため、コンテナを積む専用の機械を伊丹から持ってきたりして、大変でした。そうして皆で二階さんたちを送り出したものです。しかし、そこまでしていまだ南紀白浜空港にA300が降りたのは、これ一回だけです。あとはターニングパッドも用済み。A300には地元活性化への若干の期待があったけど、それっきりでした」

 A300の離発着の際には、地元和歌山の二階後援会の面々が大挙して空港に押しかけ、中国に飛び立つときは、派手な出発式までおこなった。ちなみに中国へ向かったA300の第一号チャーター便は、南紀白浜空港には戻らず、関空に帰還している。A300の着陸が一度きりというのは、そのせいもある。もとより第二号チャーター便の離着陸はない。

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「もともと滑走路の設計上、A300クラスの飛行機が毎日飛んできたら、滑走路の強度が耐えられません。そういう構造的な問題があったので、結果的には一度きりでよかったのかもしれませんが、そもそもなぜA300を飛ばす必要があるのか、という疑問はありましたね。現場のわれわれからすれば、仮にA300が就航しても、毎日ガラガラで飛ばす羽目になることがわかりきっていましたから」

JALのお荷物になった赤字垂れ流し空港

 前出の空港担当者は、冷静にそう分析する。ことほど左様に、二階に対する航空関係者たちの気の使いようは尋常ではない。

「JALの空港職員たちは、選挙になると、二階派への協力もしなければなりませんでした。親戚や知り合いに呼びかけお願いしていました。また、日ごろも二階さんが空港を利用するとなれば、前日から空港内はてんやわんやです。たとえば休日の土日に空港に到着するとなれば、出勤しなければなりませんでした。もちろん、二階さんのお出迎えのためです」(同前)

 そこまでJALが政治家に気配りしても、肝心の空港経営に効果があったとはいいがたい。JAL便の搭乗率は、毎年50パーセント台に届くかどうか。一方、航空行政をあずかる国土交通省としても、空港を建設した責任がある。赤字だからといっても、廃港にするわけにはいかない。南紀白浜空港は、そうして赤字を垂れ流しつづける。

 ガラ空きのJALの南紀白浜―羽田路線は、JALの大きな荷物になってきた。そこで、経営がおかしくなるたび、社内では真っ先に減便や運休候補に挙がってきた。

 だが、南紀白浜空港には、運輸族の大物議員という後ろ盾があるため、JALとしても路線を切るに切れない。路線の見直しは、形ばかりノミネートされるだけにすぎなかった。

 こうして南紀白浜空港は、100近くある日本の空港のなかで、典型的な赤字空港という汚名が残るのである。

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