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 カードは対戦成績4勝の首位楽天vs2勝の最下位・日本ハム。予告先発はここまで4勝負けなしの涌井と2敗のバーヘイゲン。どう考えたって勝ち目は薄いが関係ない。問われているのはやるかやらないかだ。やるしかないんだよ。

 特例2021による選手の入れ替えは以下の通りとなった。

【登録】鶴岡、五十幡、宇佐見、田宮、杉谷、今井、平沼、樋口、万波、谷口

【抹消】中島、西川、清水、淺間、高濱、郡、石川亮、ロニー、渡邊、今川

 他に荒木大輔一軍投手コーチ、高橋信二一軍打撃コーチが外れ、加藤武治二軍投手コーチ、渡辺浩司二軍打撃コーチがコールアップされた。ちなみにファームは選手が揃わないため、完全に日程が止まっている。つまり、今のファイターズには一軍も二軍もない。「全軍野球」だ。

 僕は7日の札幌ドームに自分は行けないんだなぁと泣けてきた。これまでだったらこんな大一番、何とかして見ようとしただろう。けれど、僕の住む東京都には緊急事態宣言が発出されている。札幌市の感染も拡大していて、医療リソースのひっ迫が叫ばれている。変異株の感染力は脅威だ。僕は自宅でGAORAを見るしかない。これがコロナ時代の遠隔地ファンの現実だ。仕方がない。

「杉谷が杉谷みたいなことをする力」は確実に存在する

 カーン! その楽天7回戦の3回裏だった。万波、宇佐見を連続三振に切り取り、格の違いを見せていた涌井が2死から痛打を浴びた。変化球をライトスタンド最前列(!)に放り込んだのは今季初スタメン、打率0割の杉谷拳士だった。一塁ベースを蹴って、右腕を掲げた姿が最高だった。みんな笑ってしまう。涌井が嫌な顔をしている。今季初ヒットがホームラン! そんな面白いことが起きていいだろうか。チームの重苦しいムードはこの一発で吹き飛んだ。これは杉谷が持って生まれたものだ。ホームランを打てる選手はいっぱいいる。ホームランを打ってこんなにみんなを笑顔にする選手はいない。

 そうしたら5回裏には今度はスクイズを決めたんだよ。もう、杉谷拳士を国宝に指定したい。僕は「帝京魂」っていうけどその魂がどんなものか、根性みたいなものか闘志みたいなものか具体的には知らないんだよ。だけど、それが「杉谷が杉谷みたいなことをする力」だとしたら降参する。杉谷は今のところ、その特殊能力を「帝京魂」と呼んだり、「野生化計画」と呼んだり、「スギノールはまだビザが取れてないので来日していません。今日打ったのはケニーです」(左右両打席で打つのがセギノールらしい)と言ったり、首尾一貫していない。たぶんあんまり深くは考えてないだろう。が、「杉谷が杉谷みたいなことをする力」は確実に存在する。ファイターズ球団史に刻印される大一番、「コロナ禍の5・07(ごーてんぜろなな)」は杉谷拳士がチームをけん引した。

 それからもうひとつ大事なこと。この試合で活躍したのは杉谷、万波、王、石井といった鎌ケ谷組だった。ヒーローインタビューのお立ち台に呼ばれたのは杉谷&万波の特例2021代替選手だ。万波中正はこの日、プロ初打点を挙げ、そのポテンシャルを披露した。僕が連想するのは2009年、インフルエンザ騒動で大量離脱者が出たとき、コールアップされた中田翔だ。

 今の、なりふり構ってられない状況下で鎌ケ谷組に出場機会が与えられるのは、もしかしたら後々、でっかい収穫につながるかもしれない。この試合、五十幡亮汰が守備固めでプロデビューを果たしている。一軍だか二軍だかよくわからないチームだけど面白いんだよ。やるしかないんだよ。

5月1日のサンケイスポーツ紙面。まだこの時点ではクラスター発生は想像できなかった ©えのきどいちろう

 附記1 中島、西川ら陽性判定を受けたファイターズ戦士は管轄する札幌市保健所の指示による隔離期間を順次終え、(チームには合流せず)自主練習を始めている。今のところ、コーチ、スタッフも含め重症化の報道も出ていない。

 附記2 一方、10日行われたPCR検査で井口和朋投手の陽性判定が確認された。球団の感染者としては14人目、投手では初。濃厚接触の可能性のある捕手、スタッフそれぞれ1名を自主隔離した。

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