この時期に、オリンピックを強行開催する意味がどこにあるのか
お前さあ……いままでどれだけのカネを使ってオリンピックの準備をしてきたんだよ。そればかりか、オリンピック開催の1年延期の原因にもなったコロナ対策で膨れ上がった国家予算、3次補正含めて175兆円を超えたんですよ。
令和2年度第3次補正予算及び令和3年度予算について(財務省)
https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202102/202102c.html
「その金額に比べれば、オリンピック中止にともなう支出3,500億円とかいう見積もりなど、はした金だ」とまでは申しませんが、東京でのオリンピック開催のために看護師さんなど医療関係者を動員しなければならない話まで飛び出す流れを見ていると、どうしても「国民の健康よりも、オリンピックを優先している」ように見えてしまいます。
決して政府関係者も都道府県・自治体の皆さんもそういうつもりはないのかもしれませんが、オリンピック開催をしたいがために、国民の自由な行動を奪い、適切な感染症対策を後回しにしてまで、どうにか理屈にならない政策を次々と打ち出しては国民を困らせているようにすら感じるんです。
明らかに、適切なコロナ対策と並行して東京オリンピック開催を強行するという判断は、政府や都道府県・自治体の能力をはるかに超える仕事量を国家公務員や自治体職員、医療関係者の皆さんに強いているんじゃないかと思うのです。世界を見渡しても、コロナ対策だけでも国家の一大事として、死ぬ気で取り組んでなお感染拡大が止められずに、接種するコロナワクチンが行き渡って効いてくれることを最後の望みにしている国が多いわけですよ。
日本がどうしても国威高揚のために、この時期に、オリンピックを強行開催する意味がどこにあるのか、よく考えたほうがいいと思うんですよね。
IOCと東京都の契約書、これはいったい誰が見たんでしょうか
そして、スポンサーに対する違約金の支払いが3,500億円に上る、いまさらやめられない、という話が出回っていますけれども、そのIOCとホスト都市である東京都の間で交わされた契約書、これはいったい誰が見たんでしょうか。誰が、契約の中身を知っているの。情報開示請求で出てくるものなのでしょうか。
本当にそういう契約があるのであれば、慎みある社会人として書かれている違約金を(減額交渉するにしても)きちんと支払うのが日本の立場だとは思いますけれども、いままで五輪にかけてきた金額、五輪を開催する時期、五輪を取り巻く世界的なコロナの環境、どれをとってもオリンピックが開催できる条件ではないと思うんですけどね。
そういう辛い現実を忘れるために、酒を飲んで早く寝てしまうのが良いのではないかと思うのですが。
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