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 舞台後方には、中村三奈子さんの幼い頃の写真などが次々と映し出される。

「チームのキャッチフレーズを伺いましょう?」

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 司会者がそうふると、中村クニさん(現在78歳)の隣にいた金明子さん(キム・ミョンジャ、現在89歳)が力強くこう答える。

「いなくなった娘を探しています」

 そして、クニさんが続けた。

「お母さんが待っているよ。帰っておいで、三奈子」

韓国警察にも共有された“三奈子さんの指紋”

 2019年1月30日。

 クニさんは、韓国KBS(韓国の公営放送)の人気番組『歌が好き』の収録にのぞんでいた。この番組は、家族がその家族の歴史や思い出などを語った後、歌を競演するもので、毎週土曜日の午前10時30分から放映されていた(現在は放映時間と内容が変わっている)。

 クニさんは、三奈子さんがいなくなってから長岡市や新潟県内で「三奈子さんを探すチラシ」を配るなどの活動を続けながら、三奈子さんが韓国に入国した可能性があると知ってからは毎年のように韓国を訪れていた。ソウルにある駐韓日本領事館、新潟県ソウル事務所、そして韓国の警察署、新聞社などを回りながら捜索協力を頼み、ソウル駅前などで韓国語で作成した捜索チラシを配っていた。

『歌が好き』に出演した中村クニさん(ステージ上、左から2人目)。右奥に中村三奈子さんの捜索チラシが映っている(筆者提供)

 韓国を初めて訪れた時には飛び込みでソウル地方警察庁にも行った。知り合いもいなかったので観光ガイドに頼み込んで連れていってもらったそうだ。中に入ることはできなかったが、その後、金さんの協力で話を聞いてもらえることになり、駐韓日本大使館の所在区を管轄する鍾路警察署に三奈子さんの失踪届も提出。インターポールを通じて三奈子さんが使っていたノートなどから採取された指紋が共有され、また、鍾路警察署はクニさんのDNAも採取。韓国全国のさまざまな施設などでの照会作業が行われたが、該当者はいなかった。

「消息はまだ分かりません」

 チラシをネットで見たという人からは情報提供もあった。韓国の元入管関係者だというその人物とも2014年に会ったが、手がかりとなるような情報はなかった。

 幼児教育に携わる金さんと知り合ったのは、クニさんがまだ小学校の教師をしていた頃だった。金さんが仕事で長岡を訪れていると知り、会いに行ったという。事情を知った金さんは、その後もずっとクニさんに寄り添った。クニさんは韓国を訪れるたびに金さんと会い、一緒にチラシも配った。番組出演も金さんのアイデアだった。

「私も子どもがいる身ですからクニさんのつらくて苦しい気持ちを思うと、いたたまれない。警察に行ったり、新聞社に行ったり、それでも三奈子さんの消息はまだ分かりません。この番組に出ればもしかしたら何か手がかりがつかめるかもしれないと思ったんです」(金さん)