世界のセレブリティとの出会いは大抵がそんな風に唐突だった。スーパーモデルのカーリー・クロスとはVOGUEのグラビア撮影で共演し、ハリウッド界隈では『カーズ』などの監督を務めたジョン・ラセターやジェフ・ゴールドブラム、ケイト・ハドソンとも交流が生まれた。仕事が終わってみて「あの外国人、そんな有名人だったんだ」と気づくことも多かった。
「相撲というか、力士というか、我々が思う以上に海外においては価値があって、きっと人気があるものなんですよね」
突然の下着CMオファー。その現場は…インド!
やがて田代のフィールドは13億人の巨大マーケットをもつインドへと広がっていった。例のごとくオファーは突然だった。事務所に下着CMへの出演依頼が届き、「インドの有名人とやるらしいよ」「とりあえずやってみるか」の軽い流れで単身インドに向かうことになった。
通訳はなし。セリフは3つだけ。インド式の眉毛や目を大きく動かす演技指導は現場で授かり、「本当にすぐ撮ってすぐ帰ってきた」。自分のしたことの手応えも何もないまま日本に戻った田代は、近所にあるインド料理屋でランチを食べながら店員に聞いてみた。
「サルマン・カーンって知ってる?」
鼻で笑われた。
知ってるに決まってるだろう。何言ってんだ、お前は、というような。田代はCM撮影の現場で共演者と撮った2ショット写真を見せてみた。うわっ! 大きな声を挙げ、店員の顔色が変わった。どうしたどうした? 厨房や事務所から店中のスタッフが集まってくる。田代の携帯の画面をみた瞬間、誰もが目を丸くした。CMで共演したサルマン・カーンはボリウッドの生きる伝説とも呼べるような人物だったのだ。
「こいつ、すごいの?」
「すごいよ! スーパースターだよ! だから、お前もスーパースターだ!」
ついにやってきた映画出演という大仕事
インド式三段論法によって祭り上げられた田代は、店中のスタッフとセルフィーを撮って帰るハメになった。
「そこで初めてサルマン・カーンはすごいやつだったんだなと分かって、調べていったら本当にすごい人だった(笑)」
テレビCMだけでなくデリーの街中にはサルマン・カーンと田代のラッピングバスが走った。そして今度は映画出演のチャンスが巡ってきた。タイトルは「SUMO」。インドに漂着した記憶喪失の大男が実は力士で、彼が日本に戻り(なぜかヤクザとも戦いながら)再び土俵に戻るまでを描く物語だ。つまり、田代はちょい役どころかメインキャストで、ポスターにもデカデカと描かれた。