悪評を立てられないよう集落から離れた場所で酒を飲む
彼らはまずもって、飲み方が不器用だ。たとえば集落から徒歩5分の作業小屋で小宴を催す(写真)。集落の近辺で村びとの目が届かないところなんてないから、小屋内の様子は外に筒抜けだ。そこへゆくと前途ある若者らは周到だ。悪評を立てられたらかなわないので、集落から三、四キロ離れた森の奥まった所とかを会場とする。
煙草をくゆらせているのも後輩たちだ。こう支度する。──庭先でちぎったバナナの枯れ葉を膝の上へ広げる。ズボンのポケットから刻みたばこ(乾燥した葉たばこの細切り)の小袋を取り出し、好みの量をバナナ葉の上にのせる。砕いたタマリンドの殻をそこに降りかけ風味づけにする。そして吸い口の方がやや細くなるように巻く。味は深い。ちなみに紙巻煙草は高価だから、彼らは口にしない。
酒飲み男が名誉挽回する「冠婚葬祭」「土木工事」
ソツのない村びとなら、酒盛りのあとは寝床に引っ込む。しかし我らがミドル・エイジはそんなケチな振る舞いはしない。たとえば私と同年代のG。農閑期なら朝から赤ら顔だ。シラフのときの押しの弱さが、このときとばかりに逆へ振れるのだろう。村びとが車座になったたき火のそばまでわざわざ出向いて、リクエストもないのにナツメロを歌い、オチのない話をし、見当外れの相槌を打つ。村の女性たちからの評判は、言わずもがなである。
「Gらとの付き合いを控えたら」と、村の長老から遠回しに注意されたこともある。でも私は、判官びいきというか、後輩らの会合をおろそかにしなかった。おかげで私まで酒飲みと陰口を叩かれた。
ところで幸いなことに、Gらには檜舞台が用意されている。たとえば冠婚葬祭や土木工事で助っ人を務めるときだ。彼らはフットワークが軽く、また村びとに対しマメで献身的でもある。荷運び、道具の整理、賄い、獲物の解体を進んで引き受ける(写真)。そして、助っ人の仕事が済めばいよいよ、お約束の酒が依頼主から振る舞われる。人前で堂々と飲む彼らの表情は、いつになく誇らしい。
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