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関空建設工事で起きた生々しすぎる“官製談合” 1兆円超の工費を司った元官僚による異様な要求の実態とは

『泥のカネ 裏金王・水谷功と権力者の饗宴』より #27

2021/05/10

source : 文春文庫

genre : ニュース, 社会, 政治, 経済, 読書

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浮いた金はどこへ行ったのか

 昨今、中国行き4泊5日の割安ツアーだと、10万円台が相場だ。4、5万円の格安ツアーもめずらしくない。国会議員が大挙して向かった小沢一郎の訪中ツアーでさえ、1人あたりの費用は19万円だったと聞く。にもかかわらず、40万円もかかったとなれば、相当な割高である。ツアーへ参加した建設業者から愚痴が出るのも、やむを得ない。

「出てくる料理は、安物の中華ばかり。これほど高いとなれば、ツアーを企画・運営した人たちは、かなりのぼろ儲けでしょう。浮いた金がどこへ行ったのか。20万はピンハネされているのではないか、と業者のあいだでいろんな憶測を呼びました」

 参加業者がそうこぼす。

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「ただし、第二滑走路がオープンしたとはいえ、まだまだ関空の二期工事の真っ只中のツアーですからね。不満をあからさまに口にする勇気は、誰もありません。なにしろ、関空工事はどれも一件請け負えば、100億円を超える大きな工事です。業者はみな古土井さんを窓口にして、お願いしてきました。言うてみたら、談合の調整役が彼ですわ。『今回は、ぜひうちに行かしてください』と願い出たら、『よかろう。今回札を入れろ』とか『お前のところはちょっと後へ回れ』と指図される。関空は海上の飛行場ですので、まず淡路島あたりから埋め立て用の土砂を持ってきて、その上に滑走路や施設をつくる。二期工事だけでも、1兆円以上の工費がかかっている国家プロジェクトやから、業者としても必死なわけです」

 かつて関空の第一期工事では、大林組の常務だった平島栄が、金丸信や安倍晋太郎の威光を借り、関空本体の運輸省の天下り社長を排除して建設工事を差配してきた。西松建設に移籍した「業界の天皇・平島」の失脚後、誰が二期工事をさばくのか、と業界内で混乱が続いた時期がある。そしてやがて混乱が収まり、新たな仕切り役として登場したのが、関空造成会社の首脳である運輸省の元官僚だったわけだ。