子どもたちの意思をどう尊重するか
――今はどういう状況なのでしょうか。
牧野 子どもたちも含めた家族会議を経て、年内に夫婦別姓が成立できるよう、今は弁護士と話し合っているところです。
――夫婦別姓を叶えるために書面上は離婚をし、事実婚というかたちで家族のかたちを継続する、ということですね。
牧野 そうです。ただ今の日本では「共同親権」が認められておらず、父か母のどちらかだけが親権を持つ「単独親権」なので、どうしても父・母どちらかに親権を決めなくてはいけません。そこをどうにか共同親権に近いかたちにできるような書面づくりを弁護士と一緒にやっています。
――たとえば母親が親権を持つことになると、子どもの名字も母の名字になるということですか。
牧野 これがまたややこしいのですが、戸籍と親権は別物のため、戸籍は夫と一緒で父親の名字を名乗っているけど、親権は母親にある、というパターンもあります。ただうちの場合はそこまでぐちゃぐちゃにしたくないので、親権を持つ方の籍に子どもも入る、というかたちにする予定です。
子どもが15歳以上の場合、どちらを親権者にするのかを子ども自身で選ぶことができますが、我が家の場合は一番上でもまだ11歳のため、一旦は夫婦で決めるしかありません。そこで弁護士の先生にもらったアドバイスとしては、子どもが15歳になった段階でもう一度親権について話し合う、という文言を盛り込むこと。そうすれば、子ども自身が自分の意思で選択をすることができます。
子どもに「選択肢がある」ことを提示すること。それも、夫婦別姓に踏み切った大きな理由のひとつです。自分たちらしく生きるとはどういうことなのか、両親である我々がその選択肢を模索しながら掴み取っていく姿を見てほしいと思ったんです。
夫婦別姓に対する、子どもたちの反応
――夫婦別姓に対して、お子さんたちの反応はいかがでしたか。
牧野 子どもたちははじめ離婚に対してネガティブなイメージを持っていました。ただ、結婚・離婚にかかわらずお父さんお母さんが一緒に住んでいない家もあるし、女の人2人で子どもを育てている家庭もある。
子どもたちに、「お父さんお母さんが一人ずつひとつ屋根の下にいないとみんな幸せじゃないのかな?」と尋ねると、「本人たちが幸せならどんなかたちでもいいよね」という答えが返ってきました。そこから、今回の決断はネガティブなものではない、と理解してもらえました。
――牧野さんの夫は、どう受け止めていますか。
牧野 夫婦別姓自体には賛成してくれていますが、親権のことですごく悩んでいます。夫が親権を持てなかった場合、あくまでペーパー上の離婚とはいえ、子どもと暮らす権利が保障されなくなるのではないか、という恐怖と今も戦っています。
「夫婦間の不平等」について悩んでいるのは女性だけではありません。親権のことだけでなく、「男だから稼がなきゃ」といったジェンダーバイアスに夫も苦しめられていた部分もあるでしょう。これからは夫が抱えるモヤモヤも汲み取っていきたいんです。
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写真=深野未季/文藝春秋