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「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか

後藤謙次「政局」インタビュー#2

2021/05/09
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日米首脳会談を行った首相の2つの“裏ミッション”とは?

 二階発言があった日の夜から訪米し、バイデン大統領と日米首脳会談を行った菅首相には、2つの裏ミッションがあったと私は思います。

 ひとつは、オリンピック開催についてバイデン大統領の全面的協力を取り付けること。しかしこれは、日米首脳会談後の共同記者会見でバイデン大統領が「日本の決意に対する支持」の表明にとどまりました。「とにかく頑張ってくれ」と励まされただけだったようです。

バイデン大統領 ©時事通信

 オリンピックについては、多くの国から選手が来なければ大会は成立しない。さりながら、たくさんの選手が来日すれば、それだけ感染拡大の危険が高まります。五輪開催を強行するにしても、中止するにしても、菅政権は大きなリスクを抱え込むことになりました。開催の強行が政権にとってマイナスに働く事態は、じゅうぶん考えられます。

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日米首脳会談の時の菅首相とバイデン大統領 ©時事通信

日本がファイザー社に足元を見られている何よりの証拠 

 首相訪米のもうひとつの裏ミッションは、供給が大きく遅れているコロナワクチンの確保だったと見ます。しかし、バイデン大統領から「協力する」という言及はなく、菅首相はワシントンからファイザー社のブーラCEOに電話をかけて、追加の供給を要請しました。帰国後、首相は国内の対象者に必要なワクチンに関して「9月までに供給されるめどが立った」と胸を張りました。

 しかし、電話なら東京からでもかけられるはずです。この点を外務省の担当者に質問してみました。すると答えは「時差がなければ体力的に楽だから」と苦しい説明でした。しかもブーラCEOは、その日ニューヨークにいたそうです。一国の総理が相手であれば、「こちらから行きます。ワシントンでお会いしましょう」と申し出るのが普通ではないでしょうか。総理大臣が自らニューヨークへ電話してワクチン供与をお願いするというのは、日本が足元を見られている何よりの証拠といえるでしょう。