不公平感を生んだワクチンの大規模接種センター設置
東京と大阪に、ワクチンの大規模接種センターを設置する件も同じくプロセスや裏付けの説明がおろそかでした。5月24日から3カ月間、毎日1万人の高齢者に接種するというのですが、なぜその日程なのか。なぜ自衛隊の医官や看護官が派遣されるのか、理由は説明されていません。背景には日本医師会との関係があるとも考えられますが、首相自ら岸信夫防衛相に指示して、唐突に決まりました。
それまで政府は、ワクチン接種はどんな町や村でも同じように進めます、と公平性を強調していたはずです。しかし、今回の接種センターは国の直轄で設置されます。接種対象者も予約方法も不明で、不公平感を生んでいます。
会場は東京が大手町の合同庁舎で、大阪は中之島。近県から大勢の年寄りが電車に乗って都心へ移動するリスクなど、どこまで考慮されているのかと考えざるを得ません。
ワクチン情報を発信する司令塔はついに6人に
現場の混乱ぶりは、ワクチン情報の発信する司令塔の多さにも表れています。これまでは菅首相、加藤勝信官房長官、西村康稔コロナ担当相、田村憲久厚労相、河野太郎ワクチン担当相の5人が発信をしていましたが、ワクチン接種センターの件で、岸信夫防衛相も新たに加わることとなり、ついに船頭は6人になりました。首相の一存で任命された各担当大臣がめいめいに発言するので、チームとして機能していません。
しかしながら、内閣支持率は40%程度と高いところで安定しているのが、この政権の強みです。自民党史上初めての無派閥の総理で、党内基盤の弱い菅首相にとって、国民世論は大きな拠り所だからです。
ただし各世論調査の個別のQ&Aを見ると、支持の理由はネガティブです。代わりの人が見当たらないことと、「コロナがここまで広がったら、ガタガタするより1人に任せるほうがマシだよね」といった諦めに近い感情が各種世論調査の回答からは読み取れます。