Eテレのニッチでマイナーな番組に豪華キャストの理由
――多くの著名な俳優がオファーを承諾した要因はなんだったのでしょうか?
平井 『昔話法廷』は、いつ放送しているかもよくわからない、Eテレのニッチでマイナーな番組です。朝ドラや大河ドラマとは違って、演者さんにとっては出演しても大した得にはならないと思うんです。
けれど、みなさん、「なにソレ! 自分もやってみたい」と企画自体を面白がってくださるんですよね。そして、「子どもたちが使う教材を作る」ということを意気に感じて、手抜きなく演じてくれました。
それは、声だけの出演の人も同様です。例えば「さるかに合戦」回で猿の声を担当してくれた中村倫也さん。収録ブースで実際に涙を流しながら、声を振り絞って何度も演じていました。みなさんのそういう熱い気持ちは作っている側としてはとても嬉しいですし、誇りに思います。
それが番組の熱になって視聴者に伝わり、多くの方に楽しんでいただけたんだと思っています。
最終章「桃太郎」 俳優・仲野太賀への熱烈オファー
――番組HPでは、最終章「桃太郎」の配信が始まりました。見どころについて教えてください。
平井 とにかく、演者の皆さんの“演技合戦”がものすごいですよね。序盤、鬼の妻役の仲里依紗さんが涙ながらの熱演で一気にハードルを上げて、白石加代子さんが雰囲気たっぷりに桃太郎のおばあさんを演じた。そして、桃太郎役の仲野太賀さんも、ほんとすごかった。
――桃太郎が鬼を襲った理由とその背景が徐々に明らかになるところで、仲野さんの迫真の演技に目が離せなくなりました。
平井 当初から、桃太郎役は、どうしても仲野さんにお願いしたいと思っていました。今回の桃太郎って、とても難しい役どころだと思うんです。大勢の人を救った英雄然としたイメージだけでなく、複雑な心情を演じなければならない。証人たちの話を聞いている時の何を考えているかわからない不穏さ、胸の中に蓄積された怒りや悲しみ、あるいは罪を犯してしまう幼さや危うさ……。仲野さんはとても繊細に、熱量高く演じてくれました。
そして、天海祐希さんと佐藤浩市さんの存在感たるや、ですよね。声量やトーンまで計算し尽くしたお二人の言葉が、番組を見たみなさんの心を大きく揺さぶると思います。