秘書を派遣した魂胆
00年、東電は福島第二原発の事業を前田建設と水谷建設に発注。水谷建設は原発から出る残土処理を60億円という巨額の事業費で請け負った。
一連の事件は、その東電との取引が端緒になっている。原発の残土処理事業に着目した名古屋国税局が、水谷建設ならびに関係各所を税務調査し、事業資金の流れから亀井と親しい電力業界の顔役の存在が浮上する。それが白川司郎である。もとはといえば水谷は、かつて亀井と共同で警備会社を設立していたこの顔役を通じ、亀井とのパイプを築いたというのが、定説になっている。
亀井の政策秘書が忙しいなか片田舎の還暦パーティに駆けつけたのは、水谷建設グループの脱税事件が浮上する直前のことだ。亀井と水谷の2人には、報道されてきた以上に濃い交わりがある。それを象徴する出来事が、亀井事務所への女性秘書斡旋といえるかもしれない。鹿谷あけみの芸能活動に携わってきた水谷建設関係者が振り返る。
「水谷会長は、送り込んだあけみの妹を、亀井事務所とのつなぎ役にしようとしたのではないでしょうか。向こうにいれば、亀井さんの動きもわかるし、何かと便利でしょ。情報収集係、あるいはパイプ役とでもいえばいいのでしょうか」
一方の亀井事務所としても、政商、水谷の申し出を断りづらかったのかもしれないが、それにしても、地方のデパートガールからいきなり実力政治家の事務所入りとはめずらしい。おまけに、この秘書の斡旋話には続きがある。
合計500万円の“口止め料”
〈水谷功氏の件は、平成15(2003)年2月6日をもってすべて解決済みであることを約束する。又、水谷功氏が、この件で何かあった場合は、当方にて解決するものとする〉
便せんにそう走り書きされた一通の文書がある。言葉面だけでは何のことかわからないが、文面の末尾には当事者の署名入りで、こう書かれている。
〈一金弐百萬圓也受取りました〉
先の水谷関係者がこの文書の意味するところを説明する。
「どこで嗅ぎつけたのか知らないけど、亀井事務所に彼女を送り込んだ件について、水谷会長を脅してきた輩がいたのです。やって来たのは2人でした。1人は『自民党総合政策調査会』の名刺を持っていましたから、政界となんらかの仕事をしている人でしょう。いずれにせよ、こちらはやましいところはない。向こうが金目当てなのは想像がつきました。しかし、亀井事務所に迷惑がかかってはいけません。だから、仕方なく200万円と300万円、合計で500万円を渡したのです。まあ、恐喝のようなもんです」