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トラブルに備えて暴力団関係者を手配

 つまるところ、文面にある〈弐百萬圓〉は、亀井事務所への秘書斡旋について口外しないよう裏取引した際の1人分の口止め料だ。

 現金の受け渡しは、東京・丸の内にあったパレスホテル10階のラウンジでおこなわれた。水谷側はあらかじめ帽子を深々とかぶった暴力団関係者を他のテーブルに配置し、トラブルに備えたという。

写真はイメージです ©iStock.com

「私もそばに座っていたからよく覚えています。暴力団関係者を手配したのは、ある政治家の元秘書でした。集めたのは新宿の組だとのことでした。彼らも1階のフロント付近にそれっぽい人たちを呼んでいましたけど、10階の喫茶ラウンジにやって来たのは、1人だけでした。それでけっこう青ざめていました」

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 水谷に代わって現場に立ち会い、現金を渡したという水谷の側近がいる。こう記憶をたどる。

「脅してきたのは2人でしたから、向こうは2人分の200万円と300万円にわけて持ち帰ったんです。合計で500万円渡しました。向こうはまずいと思ったのか、金を受け取ったら、逃げるようにしてその場を立ち去りました」

 その500万円のうち、実際にパレスホテルで200万円を受領したという当事者に直接尋ねた。

「ああ、あれは口止め料や」

 そうあっさり認める。だが、話は亀井事務所や水谷側のそれと微妙に食い違う。

「でも、事務所の秘書斡旋なんて話は知らんで。水谷は亀井のおかげで仕事をとれていたんだけど、それをよそでしゃべっているから、いい加減にしろ、と呼び出したんだよ。パレスの10階だったな。すると、ワニ革のかばんを持っているヤクザも来とってさ、やばかった」

「彼女は今でもおりますけど」

 このとき水谷側に見せた登場人物のチャート図がある。それによれば、あけみの妹と亀井事務所のことが書かれている。還暦祝いをはじめ、水谷との関係について、亀井事務所の秘書、井上本人に聞いてみた。

「還暦パーティには、招待状が来たから行っただけ。実はどうしようか迷っていたんです。それほどの付き合いはないしね。代議士に聞いても、もう10年以上前に会っただけだから、何も話すことはないと言っています。うちが自民党を出てからは、水谷さんとは一切つき合いないからね」