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しんどい物語だったけど…朝ドラ「おちょやん」クライマックスの大逆転に見る“好感度と視聴率”の宿命

2021/05/13

「あまちゃん」の伝説を再び体験できるかも

「おかえりモネ」は宮城県気仙沼に生まれ育った主人公・モネこと百音(ももね)が気象予報士を目指す、オリジナルの現代劇。予告映像を見ると、海に山にと、ロケをふんだんに行っていることがわかる。透んだ青空に浮かぶ虹や彩雲、風になびくヒロイン(清原)の髪とまぶしい笑顔……徹底的にさわやか路線で押してくる。まるで高性能の空気清浄機のようだ。

 かつて「純と愛」が悲劇的な終焉を迎えたあとに「あまちゃん」(2013年度前期)が明るくさわやかで笑いも満載な内容だったため、評価がうなぎのぼりとなった。あの朝ドラ伝説を再び体験できるのではないか。男たちに振り回された「おちょやん」のヒロインの苦悩の日々は「おかえりモネ」のジャンピングボードにもなったのだ。嵐を通り抜けた先に、快晴と虹が見えた、というような。

「おかえりモネ」は著名人の一代記ではないながら、典型的な好感をもたれる朝ドラの要素をもっている。それは何か――。

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「おかえりモネ」の番組情報(NHKホームページより)

「明るく・元気に・さわやかに」

 2000年度前期に放送された「私の青空」のチーフプロデューサーは朝ドラの3原則を「明るく・元気に・さわやかに」と先輩から教わったと語っていた(「NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 私の青空」より)。今から60年前、朝ドラがはじまった頃の主婦の願望「私たちももっとのびやかに、さわやかに生きたい」に朝ドラが応えた(「連続テレビ小説1961年から2015年 朝ドラの55年 全93作品完全保存版」より)。それ以来、一貫して朝ドラには「明るさ」「さわやかさ」の2つが欠かせない。「元気に」は入れ替え可能で、「べっぴんさん」(2016年度後期)や「ひよっこ」(2017年度前期)などのおとなしいヒロインの時代もあった。

 昨今は「あまちゃん」の影響から「おもしろさ」も要素のひとつになっている。お笑い芸人出身の脚本家を起用した「とと姉ちゃん」(2016年度前期)や「萬平さーん」「私は武士の娘です」などキャラクターの決めゼリフが受けた「まんぷく」(2018年度後期)、そして「サラリーマンNEO」や故・志村けんのコント番組を手掛けた演出家が脚本まで書いた「エール」(2020年度前期)はコメディ色が付加され笑いが求心力となった。

「おかえりモネ」の「おもしろさ」は予告映像からは未知数ではあるが、「明るさ」「さわやかさ」はふんだんに詰まっている。今回は内野聖陽が演じる父親もいい人そうだし不倫もなさそうだ(あくまで予想です)。