NHKの看板・朝ドラこと連続テレビ小説「おちょやん」(2020年度後期)もいよいよ最終回。間髪入れず5月17日(月)からは「おかえりモネ」(2021年度前期)がはじまる。
「おちょやん」の杉咲花から「おかえりモネ」の清原果耶へ――恒例行事、ヒロインのバトンタッチも行われた。入れ替わりに当たり「おちょやん」を振り返り「おかえりモネ」への期待を綴りながら、高視聴率をキープし続ける朝ドラの好感度の正体について考えてみたい。
しんどいエピソードの連続だった「おちょやん」
「おちょやん」は昭和の名脇役・浪花千栄子をモデルにして、波乱万丈な人生をなぞり、かつてないほど主人公が苦労に苦労を重ねたドラマだった。そのせいなのかわからないが、これまで世帯視聴率20%超えが当たり前とされていた朝ドラでは珍しく、初回から最終週1週間前まで一度も大台を超えていない。
それが良くも悪くも話題のひとつとなるのも朝ドラならではである。ただ、世帯視聴率と内容を結びつけることは早計だ。昨今はコロナ禍による生活習慣の急激な変化もあれば、配信でテレビ番組を見る習慣も広まっている。もはや世帯視聴率は人気の指標にはならない。だからまずは毎朝スポーツ紙のウェブ版がネットで世帯視聴率を紹介する無意味な習慣をなんとかしてほしいものである。
世帯視聴率の是非はさておき、「おちょやん」は貧困による家族崩壊、毒父による子どもに対する搾取、弟の裏社会への転落、夫の不倫……と社会問題がてんこもりで、いくらモデルの人生を参考にしたもので最終的には成功譚であることがあらかじめ情報として発表されていたとはいえ、かなり重量級なしんどいエピソードの連続はこれまでの朝ドラの中でも異彩を放っていた。
“不幸の積み重ね”のドラマ的効果とは
それでもクライマックスになると、どんなに苦しいことがあってもいつかいいことが訪れる最終週のサブタイトルのごとく「今日もええ天気や」と希望の光が差し始める。朝ドラ史上最強のバッドエンドと言われる「純と愛」(2012年度後期)が内容を書き記すこともためらわれるアグレッシブな最終回だったことと比べたら、断然救いがあった。
「おちょやん」のヒロインにふりかかった数々の苦しみを現代のコロナ禍に置き換えて見ることも可能であろう。さらに、不幸の積み重ねはクライマックスの大逆転の効果を最大にするためだったと思えば、エンターテインメントとしてけっして悪いドラマではない。なにしろ人生の大逆転は、おじさんたちの顔芸勝負が繰り広げられる「半沢直樹」や、世の中出し抜いたもん勝ちの「コンフィデンスマンJP」など昨今のエンタメの人気要素なのだから。
その逆転劇は次回作の「おかえりモネ」にも繋がっていく。