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「物価は上がるけど賃金は下がる」というスタグフレーション

 政府も都道府県も自治体も医療関係者も国民も、それなりに我慢してみんな頑張ったはずなのに、感染者数を減らせなかったばっかりに、経済再興のための前向きな投資をすることができず、停滞してしまうというのは残念なことです。結果として、これから起きるかもしれない懸念の最たるものは「物価は上がるけど、景気は悪くなり、国民の賃金は下がる」というスタグフレーションと呼ばれる最悪な経済状況に陥ることです。

 製造業が日本経済の根幹で、経済収支の虎の子だった時代は、とにかく円安に誘導し、製造原価を引き下げるために固定費である人件費負担を減らしたいと思っていたのはいまは昔。いまやサービス業が7割を占める日本経済において、むしろ円安で賃金も物価も上がらない日本は「割安な国」として、インバウンド頼みで「観光客の皆さん、安いから日本にいらっしゃい」という貧乏国に転落しかねない怖れがあります。コロナ感染症のリスクがあると知りつつ中国からの観光客を政治的な事情で受け入れ続けた結果、昨年2月から4月にかけてのコロナ感染者が急増したのは北海道だったこと、みんな思い出してください。

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21年遅れでやってきた世紀末の政治

 昔はゼロ金利と言われれば日本の金融政策のお家芸だったわけですが、コロナ拡大時期を経て、いまやドイツもどこの国もほぼゼロ金利です。たくさんマネーを供給し、資産バブルを起こし、湾岸タワマンや都市部の土地付き一戸建てを持つ不動産オーナーや、国際優良株やビットコインのような「有限のもの」である証券や資産がバブルを起こす一方、持たない者、過当競争で売上のなくなった企業、競争力を失った地方経済は沈没をし、格差増大の方向へとシフトしていくでしょう。そして、競争力のない人たちは、無能な菅政権を声高に批判しながら、政府にすがり、国庫から大盤振る舞いのお札が降ってくることを夢見て日々を過ごすことになりかねません。

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 そして、貧しいこと、暮らせない経済状態であることは、コロナが原因とはいえ、失政であることに変わりはないのです。果たして、コロナによって仕事を失い、貧乏であることはその本人の責任なのでしょうか。取り残された人が少しでも良い暮らしができるような経済政策、よりよい政治を追求するべきなんじゃないのかと思うんですよね。

 しかしながら、すでに世界各国から払い込まれた放映権料を返さなければならない東京オリンピックの開催が強行され、ワクチンが優先的に選手団に接種され、高橋洋一さんがコロナ感染者数など「さざ波」だと軽視して批判されるというのは21年遅れでやってきた世紀末の政治なんじゃないかと思ったりもします。

 埋蔵金でもあれば良かったんですが。

INFORMATION

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