“頑張らなければ報われない”という考え方がある一方で、さまざまな要因から頑張ろうとしても頑張れない人たちもいる。そうした人たちに対して努力を求めるのは、はたして適切な態度なのだろうか?
そうした疑問に向き合った一冊が、宮口幸治氏の『どうしても頑張れない人たち ケーキの切れない非行少年たち2』だ。「やればできる」の呪縛、頑張らなくてもいいという風潮、「みんなちがってみんないい」の問題点……さまざまな角度から“頑張れない”人たちを取り巻く状況や、必要な支援について検討した同書の一部をここでは抜粋。“頑張れない”少年少女たちのリアルな思いを紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)
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「たぶん失敗すると思う。将来」
ここまで頑張れない本人の状況とやる気を奪う周囲の言動についてご説明してきました。一般的に言って、頑張れない人をとりまく状況は、なかなか厳しいものがあります。ところで、頑張れない本人自身は、正直どう感じているのでしょうか。周りから、「できなくても気にするな」と言われて気にならないのでしょうか。ずっと平気でいられるでしょうか。「もっと自分に自信をもて」と言われてもそうできない自分に自信はもてるでしょうか。
何であれ、できないよりはできた方がいいに決まっています。評価されたいし、結果も出したい。これは誰にも共通しているはずなのです。
以下は2016年5月に日本テレビで放送されたNNNドキュメント「障害プラスα~自閉症スペクトラムと少年事件の間に~」という番組の中で、インタビューを受けていた小学生が答えていた内容です。ある障害をもった子どもに日常で感じている悩みを聞いてみたものです(ちなみに、私もインタビューを受けたこの番組は、『発達障害と少年犯罪』というタイトルで書籍化されています)。
以下がその子とインタビュワーとのやり取りです。
子ども「(友達は)自分となんか違うと思う。(僕は)すぐ持って来なあかんやつとかが忘れる」
(自分でも気が付いているけれども忘れることを止められない?)
子ども「うん。止められへん」
(将来どういう仕事をしたいとかあるの?)
子ども「たぶん失敗すると思う。将来」
(どうして?)
子ども「失敗ばっかりする」
(それは自分が失敗ばっかりするから将来も失敗すると思う?)
子ども「うん。やるのが苦手。頭を使うのが」
きっとインタビューという場がなければ、この子の本心を周囲の大人が知ることはなかったでしょう。その子は友達と比べて自分はできないことに気づいているのです。そして「できない自分は将来失敗する」と子どもながらに薄々感じているのです。このような子に「できなくても大丈夫だよ」といった言葉かけをして、それが慰めになるでしょうか。慰めどころか逆にその子に惨めな思いをさせてしまうだけではないでしょうか。
“友達と同じようにできるようになりたい”
この気持ちは、その子にとって一点の曇りもないでしょう。